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父親であるフレイ・ニルフィーダは魔王軍の最強部隊である七魔将と呼ばれる超エリート幹部である。
しかも七魔将の内で2番目に強い第二位の地位を得ている。
簡単に言えば、父親に一対一で勝てるのは魔王か第一位の奴だけということである。
そのことを聞いて俺もポテンシャルはあると勝手に勘違いしていた。
しかし、悲しい現実が告げられた。
「う〜ん。体術はそこそこなんだけど、その他はあまり才能はないかなぁ」
「うぐっ」
くそっ、この父親普段優しいのに戦闘のことになるとズバズバと言いやがって………。夢を持つ三歳児に言うことかよ。
「こらっ!あーくんにそんな厳しいこと言わないの!」
珍しく母親であるマーサがプンスカ怒っている。
「ごめんごめん。でも、早めに言っておかないとアレクのためにもならないでしょ?」
くそ、確かに正論だ。
「あーくん大丈夫だよ! ほら!魔法だってあるんだから!! 今から確かめに行こ!」
そう言って頭を撫でながら慰めてくれるマーサ。
しかし、気分は晴れない。
何故なら魔法に関しては全くと言っていいほど期待してない。
これも今まで魔法が使えないか試行錯誤したが全くと言っていいほど使うことができなかったためである。
メイドの隙を見て魔法に関する本を読んだが、火、水、風、土からなる四大属性に関してさっぱりだった。
他にも固有魔法というのがあるらしいが使えるかどうかを確認する術は今はない。
今のところ種族の特性以外は何も取り柄がないため、気分は最悪だ。
さっさとベッドに潜って一日中寝たい。
その気だるさが表情に出てるのか、マーサに慰められながら手を引かれてある部屋に連れてかれた。
マーサはメイドにあるものを取ってくるよう命令し、ソファに2人で座る。
「さっきも言ったけど大丈夫だからね? 何があっても私はあーくんの味方だよ〜?」
「ありがと、母上」
「ふふっ、ここは2人きりだからもう少し甘えてもいいんだよ〜?」
と言って抱きしめてくる。
「はいはい。大丈夫だよー」
そう言いながら頭を撫でてくれるマーサ。その優しさを感じるその行動に少しだけ立ち直れた。
そう、まだ俺に四大属性が使えないとは決まったわけではない。本に載っているやり方が悪かった可能性もある。
しばらくして、メイドが持ってきたオーブを机の前に置いた。
そうか、これが本に載っていた触った人の持つ属性がわかるというオーブか、名前は確か……マジックオーブ。安直な名前だから覚えている。
「これはあーくん使える魔法の属性がわかる道具なの、私は…………」
と言ってたマジックオーブに触るマーサ。
そのオーブからは水色と緑色に光り輝いている。
どちらかと言えば水色の方が光が強い。これは水属性の方が適正があるということ?
二つの属性を、持っているのは珍しいことだったりすんのかな?
「火属性だったら赤色、水属性だったら青色、風属性だったら緑色、土属性だったら茶色が光るの、この四種類は四大属性っていうのよ………言っても少し難しかったかな?」
確かに三歳児には少しだけ難し話しかもしれない。
普通の子供を演じる為にも次このような話をされたら、アホな顔をして何も分かってない振りをしよう。
目指すは一般的な子供だ。
「うん、わかったー」
オーブに手を伸ばす。緊張の瞬間。どうか属性がありますように。
オーブに手が触れる。その瞬間にオーブから光り放たれる。
その色は…………。
…………あぁやっぱり。
「無色? いえ、そんなはずは………もしかして固有魔法持ち?」
光の色は無色。何色でもなかった。
四大属性は使うことができない。それが現実だった。
しかし、固有魔法という希望が見えそうな単語が出てきた。
俺は読んだ本で少しだけ知識はあるけど、マーサはそのことを知らないはず。
「こゆうまほうってなーに?」
「固有魔法っていうのは、四大属性に入らないとても貴重な魔法のことよ。あーくんは無色だったから固有魔法を持っている確率が高いの!」
なるほど。無色だから魔法が使えないというわけではなさそうだ。
少しだけ希望が見えてきた。
正直、近接戦闘も魔法も才能がなかったらこの先真っ暗だ。
ずっと前に決めたプランで商人になるというものがあったけど、自分が強いことに越したことはない。
「母上! そのまほうは…」
「こうしちゃいられない! フーくんに教えなきゃ!」
と言って勢いよく部屋から出て行くマーサ。
おーい、まじか。
息子をスルーして置いて行ってしまうのかね。
まぁマーサはよく焦って周りが見えなくなることはよくあること。いちいち気にしなくても良いか。
因みにフーくんとは父親のことである。
誰もいなくなって部屋で再びマジックオーブに触れる。
何度やっても色は無色。
「はぁ、属性魔法……使いたかったなぁ」
しかし、固有魔法という希望が今そこにある。
固有魔法次第でこれからの方針は大きく決まる。
今の方針はとりあえず普通の男の子を演じることによって演技力の向上。
そして、父親と母親の2人を観察して、異世界人ではないことを見極めることだ。
俺の場合、子供の頃からやり直し。しかし、他の人が同じパターンとは限らない。
そう、元々存在する大人に意識が乗り移るパターンがあるかもしれないのだ。
そのことを考えた時、自分の両親が異世界人であるという可能性も少なからず出てくる。
その為にも俺は普通の子供を演じるしかない。
そして、子供の無邪気さを利用し、普段の生活の中で両親が異世界人ではないと判断した時に、俺の事情を話し協力してもらう。
少しリスクは高いけど、どちらかが異世界人だった時は紛れもなく見抜くことができなかった俺がアホなだけ。悔いは残らない。
しかも、この状況的に協力なくしてこの世界が生き延びれるとは思っていない。協力してもらえるのならば、その分メリットは数え切れないなどあるので是非事情を話して協力したい。
問題はどのタイミングで告白するか。
まずは固有魔法が使えるのかどうかを確かめてからだな。
使えたら少し様子を見ることにして、使えなかったら早いうちに協力を仰ぐ。
うん、この方針で行こうか。
★
無色判定から一ヶ月後。
自分で固有魔法を使えるかどうか思考覚悟したが、全くと言って成果はなかった。
家族で朝食を済ませてた後、マーサに手を引かれて再び部屋に連れてかれた。今度はフレイもいる。
机の上にはマジックオーブよりも少し大きめのオーブが置かれていた。
マジックオーブよりもピッカピカ、如何にも高そうだ。
「アーくん、今度はあとオーブに触るのよ〜。そしたら固有魔法の種類がわかるからね〜」
ついに来た。
なんだかんだ一ヶ月前までは、強い父親の血を引いている俺はなんとかなると思っていた俺だが、今は考えれば考えるほど不安で押し潰されそうになっていた。
これで固有魔法を何も持ってなかった場合俺はどうすれば良いのか。
現在は優しい眼差しを向けてくれる両親はどのような反応をするのか。もしかしたら失望されるかもしれない。
今、この瞬間に俺の人生が決まる。
そう考えると手が震える。
でも、現実からは逃げられない。
俺は覚悟を決めて、オーブへと手を伸ばした。
この物語を書いている時に思うのは本当に面白いのかという疑問。
でも、暇潰しくらいにはなるか……という思いで書いております。
まぁ3話しか投稿してないんで、暇潰しといってもほんの数分くらいですね(笑)