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俺は異世界人じゃない!  作者: ごましお
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 光が収まると2人の男女が俺の顔を覗き込んでいた。

 しかし、視界はぼやけており細かいところはわからない。


 更に体を動かそうとしてもあまり動かすことができない。

 一瞬監禁でもされているのかと思ったけど、この男女の大きさから言って赤ん坊に生まれ変わったっぽい。


 さて、まず安心できる状況だということが確認できた。

 しかし、これといって情報は全くない。

 ここは異世界らしいが魔法やらの存在があるかまだわからない。

 これからの行動方針を決めるためにもこの世界のことを少しでも知りたいが赤ん坊の体じゃなぁ。


 とりあえずもう少し成長するのを待ったほうが良さそうだ。


 ★



 俺がこの世界に生まれ変わってから半年が経った。

 その間に視界はクリーンなものとなり聴覚も正常だ。

 順調に育ってくれて良かった良かった。


 この半年間で色々とわかったことがある。


 まず一つ目は俺の寿命だ。

 当初は寿命わからねぇじゃん!と絶望していたが、俺の寿命のことを深く考えた時に頭の中に浮かんでくる数字は17だった。上手くは伝えることはできないけど、何回やっても17という数字が頭の中に浮かぶ。

 この数字がどうやって決まっているかわからないけど、とにかく5年とか鬼畜な数字じゃなくて良かったと心の底から安心した。

 5歳で人殺せとか絶対無理だもんね。


 そして次はこの世界と俺自身のこと。

 まず、この世界はよく小説などに出てくる感じの異世界という認識で問題ない。

 家の使用人が魔法を使っているのをみたことがある。

 しかもぱっとみた感じ電気で動いているものはなく、大体は謎の動力で動いているものが多い。

 まぁ魔法と見て問題はない。


 そして運の良いことに俺は生まれた家はかなりいいところらしい。

 使用人も何人もいるし、ベッドの質も良くて、皆んな着ている服は良いものばかり。

 やっぱり家が金持ちだと安心する。

 両親も美男美女で夫婦仲は良好。

 俺に対しても優しいので生まれてすぐ虐待で死ぬなんてことはなさそうだ。


 さて、ここまで情報が集まったのでこれからのプランを少しだけ考えてみよう。


 まず、この世界において一番大切なことは異世界人だとバレないことだ。

 黙って暮らしていれば見つかることはない筈だけど、その場合何も出来ずに17歳で死ぬ。

 なので、あまり目立たず強くなることが一番望ましい。

 そんなことができるのかと不安だが、生き延びるにはやるしかない。


 二つ目のプランとしては、俺に何も才能がなかった場合、商人として地球の物を作り売って、その金で俺を守ってもらう。


 デメリットはぱっと思い浮かぶだけで二つある。

 一つ目は、俺が異世界人だと言っているようなものなので、狙われる確率はすこぶる高いことだ。

 だが、裏を返せばあっちから殺しに来てくれるので、返り討ちにすれば良いとも思っている。


 二つ目は、俺の身を守ってくれる存在の身元。

 異世界人ではない信頼できる仲間を見つける必要がある。俺の命を預けるのだから当然だ。

 一番最悪なのは信頼しきっている仲間に隙を見せた途端、後ろからザクッとやられることだ。


 このプランは相手を異世界人かどうか見分けることが必要不可欠なので、何かしら相手を見極める方法を考えておくことが大切だ。


 今のところさっぱり思い浮かばないけどね。


「アレク〜ご飯の時間ですよ〜」


 そうこう考えている内に母親が部屋に来た。

 男装すれば間違いなく女性にモテること間違いなしのとても中性的な顔をしている。

 しかしその中身は俺に激甘で、のほほーんとしているため、見た目とのギャップが凄い。


 さて、ここでお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、俺の母親が喋った言葉は日本語である。

 そして、視界の片隅にある絵本のタイトルも平仮名だ。


 そう。なんとこの世界では、日本語が使われている。


 当初はやったぜ!と、一から言語を勉強しなくて良いと喜んでいたが、よくよく考えてみると前の世界の日本にあってこっちにないものは言葉として通じるのか、外来語は通じるのか、などの疑問点がいくつかある。


 例えば、リニアモーターカーやソーラーパネルなどのこの世界には無いと考えられるものだ。

 これらの物が通じる方がおかしいと考えるのが普通だ。

 なので、これから他人と話す時に、注意深く会話をする必要があるが、逆を言えばうまく誘導することによって相手が異世界人だと確認することができる。

 俺にできるのかなぁ。

 そんなメンタリストみたいな真似がど素人にできるとは考え難い。

 そんなやる気がある方では無いけど、努力はしなきゃなぁ。


 とりあえず母親も来たことだし、普通の赤ちゃんを演じるとしますか。




 ★



 異世界に来てから3年経過した。

 余命は14年となっている。

 この間に色々分かったことがある。


 まず、最初に俺が魔族だったことが判明した。

 歩けるようになった頃、屋敷の中を探検していたところ、普段見ない使用人の頭にツノが生えており、両親に確認したところ、その使用人は魔族であることが判明。

 そして見た目が完全に人間な両親や俺も魔族だったのだ。

 普段読んでくれる絵本に魔族ばかり登場することからもしやとは思っていたかど、本当に魔族だったとは思ってなかった。


 種族はドッペルゲンガー。

 魔族の中でも非常に珍しい種族らしい。

 その理由はドッペルゲンガーは、異種族と交わった時に、相手の種族と同様の子供が生まれてくるという特性によるものらしい。

 例えば、ドッペルゲンガーの父親とヴァンパイアの母で子を作った時には、ヴァンパイアの子供が生まれてくる。

 ドッペルゲンガーの子を作る為にはドッペルゲンガー同士が子供を作らないと生まれないのだ。

 その為、ドッペルゲンガーは魔族の中でもほんの数人しかいない。

 しかも、ドッペルゲンガーは、一度見た()()()に化けることができるという特殊な能力を持っている。

 そして父親はこの能力を使い魔王軍の幹部として働いているらしい。

 母親に聞く限りではめちゃくちゃ強いらしい。

 これを聞いた時は優秀な遺伝因子を貰えたことに喜びまくった。

 この父親のように強くなって、誰にも負けない強さを身につければ、寿命を伸ばすこともできる。


 俺はすぐ父親に強くなりたいと言って、少しずつではあるが、訓練を始めた。



 そして、今日も剣を振っている。

 うん。いい感じいい感じ。


 少しずつではあるけど、鋭くなっていく振りに笑みが溢れる。

 最近は毎日剣を振っている。

 一応体術や槍術も少しだけ触れたけど、今は剣術に落ち着いている。

 やっぱり剣だよね。



「アレク、少しこっちに来てもらえるかな?」


 俺の練習を見ていた父親に声をかけられる。


「はい!父上!」


 なんだろうか。

 もしかして次のステップにいくのかな。


「少し言いにくいんだけど………」


 父親の顔が曇った。


「なに?」










「才能がないかもしれない」


「へ?」






コロナウイルスで大変な時期ですね。

皆様の健康を願ってます。

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