治癒魔法
「さぁさぁ雛様!まずはこちらにお越し下さい。」
部屋の中の1室へ案内されながら辺りを見渡す。
(広い部屋だなぁ〜。続きの部屋が何部屋あるんだろぅ…)
入って行くと、そこは浴室になっており服を脱ぐように促される。
「ちょ!無理無理!1人で入れるから!」
服を剥かれそうになりながらも必死に抵抗する。
「大丈夫ですわ!雛様は何も気にせず私にお任せ下さいませ。」
(ニッコリ笑われても無理なんだってば!お風呂になんて入ったら手術の跡が…!)
抵抗虚しく服を剥かれたあと、マリーは息を呑む。
「……!雛様…これは……」
「ごめんなさい…気持ちの良いものでは無いよね…」
「そんな事はございません!」
「できれば誰にも内緒にしておいて欲しいのだけど…」
キョトンとするマリーに何かおかしな事を言ったのかと首をかしげる。
「この傷跡は治さないのですか?」
「えっ?」
「治癒魔法を使えば古傷でも、跡形もなく治せますよ?」
「マジ…!?」
「……ま…じ??もし治されるのでしたら治癒師の手配をさせていただきます。」
マリーの微笑みが女神様に見えてしまう。
「えっと…1つ質問なんだけど…」
「はい、なんなりと!」
「例えばなんだけど、その魔法って病気とかにも効いたり…しないよね?」
もし効くならば本当の事を言って治してもらいたいと思ってしまう。
願うように手に力を入れながらマリーの返事を待つ。
「…病気を治す治癒魔法というのは聞いた事がありません…」
その言葉に脱力してしまう。
(やっぱりそう上手くいくわけないよね………)
「雛様どこか具合でも悪いのですか?」
「何でもないよ!」
ついついそう誤魔化してしまう。
「そうですか…ではまず湯浴みのお手伝い致しますので!」
先程女神様の微笑みに見えたマリーの微笑みが今度は小悪魔の微笑みに見えてしまう。
「湯浴みとオイルマッサージ、その後はドレス選びと最後に治癒師の治療となりますので忙しいのですよ!」
「そ、そこまでする…」
「致します!
陛下への謁見が出来るだけでも凄いのですから!
ここは雛様の魅力を最大限引き出さないと!!」
鼻息の荒いマリーに気圧されつつも最後の足掻きを試みる。
「でも!でも!確か足は見せちゃ駄目なんだよね!?」
「あら!貴族の女性は勿論当てはまりませんわ!
そうで無ければお世話が出来ませんもの!
専属のメイドただ一人だけ…という制限はありますけれど。」
どうやら貴族の女性は子供の頃に専属メイドが決められ、滅多な事では代わる事はないとの事だ。
専属メイド一人、部屋付きメイド数名といった内容になるらしい。
「では!雛様!観念なさって下さいね!」
その言葉についつい悲鳴を上げてしまう雛であった…。