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不思議な光




あれから1週間…


(なんで私、ここから出られないんだろう…)



この1週間で不思議な事がいくつかあった。


1番不思議だったのがピルケース。


(3日分しか入らない大きさなのに…)


朝昼晩と飲まなければいけない薬をこの1週間飲み続けている。


(なんで減らないんだろう?)


雛の命綱となる薬が減らないのは有り難い事ではあったが、反対に気持ち悪くもあった。


(これ飲んでも本当に大丈夫なんだろうか…?)


ピルケースが取り上げられていなかったのは不幸中の幸いではあったのだが…


(考えても仕方ないか…これが無ければ本当の一貫の終わりだし…)





他にも不思議な事があった。


まずは照明だ。


夜になり暗くなるまで気にもしなかったがイキナリ電気がついてビックリした。


普通の電気ならそこまでビックリしなかったのだが…


「…台座だけ?」


そう台座の上に光輝く光球が浮いていたのだ。


光球に線が繋がっているわけでもなく光っている…


椅子を光球の下に置いて手で触ろうとしたが暖かい訳でもなかった…

 

それに触ろうとしてもスカスカに手が通り過ぎてしまうのだ。


「…これってどういう原理な訳!?」



雛の頭は混乱の極地にあった。




そして現在のこの状況…


雛は牢屋を見渡して溜息をつく。


(これ…ここでずっと住めそうな雰囲気じゃない?)



牢屋に似つかわしくないクッションやシーツ、服やぬいぐるみまで…


徐々に増えてくる品物に雛は苦笑する



それらの品物は毎日やってくるジャンダルが置いていく物だった。


未だに言葉が通じないものの、こちらに向かって申し訳無さそうな顔をしている事からこの品物達は罪滅ぼしの品物だと雛は思っていた。



「この品物っていつまで増え続けるんだろ?」



(品物より早く出して欲しいんだけどな…)




そしてもう一つ大きな変化があったのが周りの静けさだ。


入った当初はどこかからか言い争いのような声や大きな物音がよく聞こえていたのだが…


(3、4日前から静かになってきてるんだよなぁ〜)


雛は首をかしげながらもクッションを抱え込みベットに沈み込む。


(静かだと歌いにくいなぁ〜)


ここ最近の雛は暇を持て余していたので口ずさむ回数が少し増えていたのだ。


始めは周りの怒号が怖くて縮こまっていたのだが一日中聞こえてくるその声に最早BGMと化していた。


何を言っているのかもわからない言葉に怯えているのがなんだか馬鹿らしく思えてきたのだ。



怒号の聞こえている間なら口ずさんでも誰も聞いていないだろうと歌い出す。



それを何度か繰り返していたらいつの間にか辺りの声が聞こえなくなっていたのだ。



「※※※※※※※!」


突然の声にビックリしながら顔を上げる。


隣の牢屋から腕が伸びていた。


「えっ?何?」


何かを持って手を上下に振っていた。


ソッと近くに行ってみると手の中にあったのはどうやらお菓子のようなものだった。



「※※※※※※!」



わからない言葉を言いながら手を振るその人はユックリ手を開けていく仕草をしていた。



「くれるんですか…?」



そう言いながら男の手の下に自分の手を開けて待っていると、ユックリそのお菓子が手に乗せられた。


お菓子の甘い匂いに思わず笑顔がもれる



「※※※※※!♪〜※※※※※!♪〜」



いつも私が口ずさむ曲を突然その男が口ずさんだからビックリしてしまう。




「歌えって…事かな?」



聞かれないように静かに口ずさんでいた曲を聞かれていた恥ずかしさもあったが、どうやらリクエストしてくれたらしいと嬉しい気持ちも湧き上がってくる。



「♪〜♪〜」



いつもより少し大きめな声で歌い出すと、男の手は親指を上げてグッ!と合図をして腕を引っ込ませた。



(リクエストで合ってたみたいね)



自分の歌を聴いてくれる人がいるという事が嬉しかった雛は自分が好きな曲を何曲か歌い続けた。


その間物音は一切しなかった。


まるで何一つ聴きもらしが無いようにと息を潜めているかのようだった…



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