余命宣告
プロローグ
「…とても…残念なのですが…」
静かな部屋の中、目の前にいる男性の口元を見つめながら続きの言葉を待った。
私は本当はどんな言葉が放たれるのかわかってはいた…
でも信じたくない気持ちと、もしかしたら違う言葉が続くのではないかという気持ちがないまぜになりながら静かに待った。
男性は静かにため息をつきながら意を決したように話し始めた。
「…あなたの寿命は…あと半年です…」
その瞬間目の前が灰色になった。
言葉通り灰色に。
わかっていたはずなのにショックが大きすぎてうまく言葉が出てこなかった…
「……っ…」
ひとつ息をユックリ吐きながら気持ちを落ち着けようを頑張ってみた。
「…フー……先生…本当の事を教えてくれてありがとうございます」
うまく笑えてるかわからないながらも顔に力を入れて笑顔を作る
その笑顔に先生はとても苦しそうな顔をしていたというのは覚えていたが、そのあとはどうやって帰って来たのか覚えて無かった。
私如月雛18歳は生まれつき心臓が弱く20歳まで生きられないだろうと言われていた。
何度となく発作により心臓が止まりそうになりながらもこれまで頑張ってきた。
だが、とうとう命の期限が迫ってきてしまったのだ…
呆然としながらも今まで我慢してきた色々な事が頭をよぎった…
「恋愛…したかったなぁ〜」
ついつい漏れてしまった声に苦笑いしてしまう。
自分の身体の事は自分が良く知っていた。
だからこそ自分が好きになった人を、自分を好きになってくれた人を悲しませる結果になるのをわかっていながらの恋愛は出来ないと諦めていたのだ。
「でも…一度位はデートしたかった…」
諦めのため息をつきながらユックリとベットに沈みこんだ。
静かな部屋の中雛の呼吸の音だけが響く
その静けさが寂しくていつものように口ずさんでしまう。
「♪〜♪〜」
雛の歌は誰にも聞かれることも無くユッタリと流れていく。
この歌を誰かが聞いていたのならば、きっと誰もが感動に涙を流していただろう。
それほど雛の歌声は素晴らしかったのだ。
だが雛は今まで一度も誰かの前で歌った事は無かった。
いや歌えなかったのだ…
恋人を作るのと同様に友達も作るのを諦めていたから…
「…誰か…私を愛して…」
一人でいる事を選んでここまで来たが最後を一人で迎える事がこんなに寂しいなんて…
そう思いながら雛はユックリと眠りに落ちていった…
そのすぐあと部屋の中がまばゆい光に包まれていた事を雛は気がつく事ができなかった。
気がついていても何も出来なかったであろうが…