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Cat Hands Corporation

作者: 輝々

 請け負い会社《Cat・Hands・Corporation(キャット・ハンズ・コーポレーション)


 我が社へお寄せ頂いた御依頼は我々が責任を持って果たすことをお約束します。


 多忙な皆様へ

「猫の手」お貸しします。


 代表取締役 レオ・シルバー



◇◇◇


 とある街にある,とあるビルの中の,とある事務所にて。



 ワイワイ

 ガヤガヤ



「はい,こちらCHC第4支部です。ご依頼ですか?それでは……」


「ボクお腹空いたよぉ。」


「ぎゃぁぁぁ!!たま〇っちが死んでるぅぅぅぅぅ!!」



「はぃ,はぃ。ではご依頼の詳細に付きましては……」



「ギャハハ!!スリーカードだ!!」


「ワハハハ!!甘い!!フルハウスだ!!」


「ふっ……フォーカード。」


「「うぎゃぁぁぁぁぁ!!!」」



「わかりました。では後日駅前の……」


「お腹空いたお腹空いたお腹空いたぁぁぁ!!」


「しくしく……享年6歳……。」


「しくしく……カラッポだ……。」


「しくしく……真っ白だ……。」


「フフフ……勝負とは残酷なものだ。」


「ではよろしくお願いします。………。」



ガチャン!!



「あんた達ぃ!!ちょっとは静かにしろぉぉぉぉぉ!!!!!」



チュドォォォォォン!!



「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」


 爆発音と悲鳴が鳴り響き,その事務所から煙が上がったのはある夏日の午後だった。


◇◇◇


 いやぁ,酷い目にあったわ。クロウのやつは短気だからなぁ。


 ん?


 ………


 おお!!


 おまえら元気してるか?みんな大好き超絶ハンサムのコイン様だ。ワハハハ!!今日は俺様と楽しく……



ゴスンッ!!



 いだぁぁぁぁぁ!!


 …わかった。すまん。真面目にやる。やるからそんなに睨まないで,クロウ。


(さっさと進めなさい!!)




 はい…。


 ああ,なんだ,とりあえず……


 俺様の名前はコイン。このCHC第4支部の支部長を任されてる。

 CHCってのは請け負い会社《Cat Hands Corporation》の通称だ。請け負い会社ってのは……ん〜…まぁ……簡単に言うとなんでも屋ってとこだな。

 この支部には俺も含めて6人の社員がいるんだが,これがまた,癖のあるばっかりでなぁ。それも当然のことなんだが…

 ん?なんで当然かって? そりゃあこの会社の社員のほとんどが“ハーフ”っつう種族だからさ。

 “ハーフ”ってのは,動物と人間,2つの姿を持つ者の総称だ。一般的に狼男とかバンパイアなんて言われてるのがそうだな。狼男は狼のハーフ,バンパイアならコウモリのハーフって感じ。 要するによくマンガやらアニメやらに出てくるような変身する動物だ。 普段は人間の姿になってるやつが多いがな。

 そんな奴らだから何かと問題抱えてるやつが多いし癖の強いやつばかりだ。




 さて,まあ折角会えたわけだから今日はおまえらに唐突だがプレゼントがある。俺達の騒がしくも素晴らしい一日をおまえらに見せてやろう。 題して!!


 『密着ラブラブ24時・コイン様とハーレムナイト』


 ボキボキボキィィィ!!!



 ぎょぇぇぇ!!肋骨がぁ!!背骨がぁぁぁ!!




 「ったく……。コホン!!みなさん初めまして。八咫 黒羽です。うちのバカが迷惑ばっかりかけてごめんなさいね。じゃあ一日のスタートです。」



 俺の視点だぞぉぉ………



 ゴンッ!!


─────────────

──────────

───────



 いやぁ,今日もいい天気だ。空は快晴,風も気持ちいい。

 これで仕事がなきゃ最高なんだよなぁ。



「コイン。今日の仕事よ。」



 こいつは八咫(ヤタ) 黒羽(クロウ)。カラスのハーフだ。

 こいつがまた生真面目な女でなぁ。んでもってすぐ手出すんで,そりゃあみんなから恐れられてんだ。まあそれ以上に慕われてるってのは事実だかね。



「依頼内容は引っ越しの手伝いよ。」



 引っ越しかぁ…。



「ああ…ならビッグとマウスを向かわせた方がいいな。二人で足りるだろう?」


「最低でも3人は派遣してほしいって要望があるからあなたも行ってきて。」



 え〜〜〜〜〜。

 力仕事嫌い。

 めんどくさい。

 昼寝したい。



「ヤダ。」



「………。」


「………。」



「………ぶっ殺すわよ?」


「行かせていただきます。」


 目がマジだった。超怖ぇ〜よぉ〜〜。



「おまえらはどうすんだ?」


「別の方に回るわ。他にも2件依頼が来てるし。今日は結構忙しいわよ。」



 珍しいな。いつもなら仕事なんてほとんどないのに。


 地図渡されたけどやっぱめんどい。……おっ! 近くに繁華街があるじゃん。

 終わったらゲーセン行こ。



「終わったら次の仕事あるから直ぐに戻ってきなさいよ。」


「へぇ〜い。」


「逃げたら……わかってるわね。」


 クロウの背後に禍々しいオーラが……。



「わかったの?」


「わかりました。」



 とほほ…。


─────────────

──────────



「つーわけで,これから引越しの手伝いに行くぞ〜。」


「はぁ〜い♪」



 この妙に明るいチビッコはネズミのハーフのマウス。天真爛漫な性格で,第4支部のマスコット的キャラクター兼トラブルメーカーだ。挙げ句に都合の悪いことは3秒で忘れる素晴らしい脳味噌を持っている。



「主に力仕事らしい。ビッグ,頼んだぞ?」


「分かりました〜。」


 マウスの隣にいる巨漢はクマのハーフのビッグ。その体格に反比例するように臆病なやつだが,仕事はしっかりしてるし,面倒見がいいから常連客には大人気。

 ただ,初めて会ったやつらは皆悲鳴を上げてたが…ビッグも一緒に。だって2mオーバーはでかすぎ。んでもって貴様のその性格はなんだ。


「ねぇねぇ,今日はお得意さんなのぉ?」


「ん〜にゃ,今日は初めての客だ。なんでも豪邸を売りはらって,隠居生活したいらしい。」


「ふぅ〜ん。」


「豪邸って…3人で大丈夫なんですか!?」


「基本的には使用人のサポートらしいから大丈夫だろ。」


「使用人〜!!?メイドだぁ♪エプロンだぁ♪ロボットだぁ♪」


「ワハハハハ!! メイドだ!! チェーンソーだ!! ロケットパンチだ!!」


「二人ともメイドのイメージ間違ってますよ…。」



 まあ,こんな感じで雑談しつつも目的の場所に着いたんだが……


 目の前には規格外にデカい洋館。屋敷の前には5台のトラック。ちなみに軽トラじゃねぇやつ。



「で,でけぇ…。」


「ほぇ〜。」


「………。」



 その屋敷は想像を遥かに超える大きさだった。マウスは開いた口が塞がらないみたいだし,ビッグに至っては顔面蒼白。貧血を起こしかねない状態だ。


 こりゃかなり,相当,超絶的に骨が折れそうだ………。


「よ,よし。行くぞ!!」


ピンポ〜〜〜ン



──あっという間に5時間後♪──



 か,体が動かねぇ………。

 仕事の方は予想以上に早く終わった。使用人の働きっぷりがかなりよく,俺らの華麗な(?)サポートもあり,凄まじいスピードで作業をした結果だ。おまけに依頼は積み込み作業まで。引っ越し先で向こうの業者と降ろし方はするんだとさ。

 ただし,その代償は即効性の筋肉痛に蝕まれ,心労が溜りに溜った(約二名)我が身体。


「楽しかったね♪」


 どこがだぁぁぁ!!さすがの俺様も心身共にズダボロだぞ!!


「…し…死んでしまう。」


 見てみろ,マウス!!ビックがあまりの疲労からビックリするほど縮んでしまってんぞ!!


 ………ん!?


 ビックが……


 ビックリするほど……


 ビックがビックリ……


 ………


 ぶはぁぁぁ!!!


【YEAH〜〜〜!!! 読者のみんな暑さに負けずに元気でやってるかぁ!!? 突然登場した俺は謎のMC“ピスタチオ・森本”だ!!! さてさて今から引っ越し作業中の珍事を箇条書きにしてまとめてもらうぜピーナッツ!!! 解答者はぁぁぁぁぁ,この方!!! 漆黒の毛皮を年中纏い,産まれてこの方,毎年夏になると

「拷問の季節だぁぁぁ!!」と叫びつつも太陽の熱を吸収し続けてる男!!! 変態ナルシストの“コイン・B・ナイト”だぁぁらぁぁぁぁ!!! …おっとすまない,思わずオーバーヒートだぜピーナッツ!!! 長くなっちまったがそろそろいってみようか!!? よろしく頼むぜコイィィィン!!!】



1.訪問。屋敷のチャイムを押した瞬間,ビッグが凶悪犯罪者と間違われ23発撃たれた。内6発はかすってた。ビッグは泡吹いた。


2.確認。主と会い,通された広間に荷物山脈発見。ビッグは再度泡を吹く。マウスはケタケタ笑ってた。


3.作業開始。早速荷物の雪崩にマウスが巻き込まれた。全員で掘り出した。目を回してただけで一安心。直後,二次災害により全員が巻き込まれる。


4.作業1。最初の難関,超ド級サイズのベッドの積み込み。意外に手早く積み込み完了。玄関に豪華な装飾の柱らしきものが落ちてたが笑顔で無視。そういえば積み込んだベッドの柱は隅に3本しかなかった。


5.作業2。ダンボールを延々と積み込む。途中,マウスが

「黒角砂糖!!」と叫ぶ。ダンボールの猛攻に頭をやられたか。もしくはダンボールがそう見え始めた?


6.休憩。使用人Aからお茶を出された。湯気が出てたが栄養ドリンクだった。ビッグ三度泡吹く。


7.作業3。いよいよ大詰め。最後に変な形の銅像を積み込む。その際,しゃかりきに運んでたマウス転倒。銅像バラバラ。俺,ビッグ,全使用人,顔面蒼白。主大爆笑。なんでも時価数億の作品らしい。ビッグ今日四度目の泡。


8.謝罪。必死に銅像の兼を謝罪。近年稀に見る土下座の美しさ(ちなみにマウスは訳が分かってない)。主の一言。「あれくらいどってことないよ〜」俺,ビッグ,緊張の糸が切れ気絶。


─────────────

──────────


【オォォォォケェィィィィ!!!!!! Thank You コイン!!! なんて濃厚な5時間なんだ!!! これはたったの一部らしいぜ,大変だったなピーナッツ(複数形)!!! さてと読者のみんなへの説明も済んだことだし,俺はこの辺でおサラバだ!!! また会える日を楽しみにしてるぜピーナッツ(複数形)!!! See you again!!!】



───再びコイン視点♪───



〜♪〜〜♪♪〜♪〜♪♪♪


 ……着信だ。


〜〜♪♪♪


 ……クロウか。


〜〜♪♪


 ………だりぃ。


〜〜♪


 ………。


 ………。


 …切れた?


《さっさと出ろ!!》


 違う意味でキレた!!?


 ピッ♪


「…こちら真っ白に燃え尽きたハンサムです。今は心身共にズタボロの為,電話に出られません。ピーと鳴った後にラブコールをどうぞ。」


「……アホ?」


「なんだよ〜クロウ。」


 言い返す気力すらねぇ…。


「仕事は終わった?」


「ついさっき終わった…。ついでに俺らの人生も終わりかけてる……。」


 チラッと二人に視線を向ける。……ピクリとも動いてねぇ。


「随分大変だったみたいね。こっちで残りやっとくから事務所に帰ってていいわよ。」


 帰れればね。



「…わかった。」


「お疲れ様。」


 ピッ♪


 ………後30分寝よ。



 事務所に帰ったのはそれから2時間後だった。



◇◇◇


「大変だったわね。」


 大変どころじゃねぇよ…。HPが7しか残ってねぇ…。



「おまえらの方はどんな依頼だったんだ?」


「3ヶ所回ったんだけど,部屋の掃除の手伝いと害虫駆除と草野球よ。」



 最後のはなんだ!!?遊んでたってか!!?俺様がやられてる時にセーフティバントか!!?セーフティバントなのか!!?


「うまいようで,意味がわからないわよ。」

「………。」


「ちゃんとした依頼よ。メンバーが足りなかったらしいの。」


「………。」


「次はそっちに回してあげるから。」


「……嘘だったら,『八卓郎』(ヤタクロウ)と呼ばせてもらう。」


「ぶっ殺すわよぉぉぉぉ!!」



 失言!!!



「ウソウソ!!……んでも次はマジで頼むぞ。」


「わかったわ。安心して。」


 ふぅ……疲れたなぁ。明日は仕事がありませんように。



◇◇◇



 ワハハハハ!!どうだ!!ん?素晴らしいだろう!!特に俺!!むしろ俺だけ!!ONLY ME!!ウワハハハハハハ!!!



 スパンスパンスパンスパァァァン!!



 やめれぇぇぇぇぇ!!耳はやめれぇぇ!!



 とまぁ,こんな感じに仕事をこなしてるわけだ。普段は仕事がそんなにないから事務所でダラダラしてるけどな。時々こんな風に忙しい日もあるんだわ。


 おっと! もうこんな時間だ。そろそろお別れの時間だな。


 なんだ?寂しいのか?だったら,夕日に向かってこう叫べ。



「コイン様ぁぁぁぁ!!愛してるぅぅぅぅ!!!!」


 そしたらその晩に添い寝してやるぜ,ワハハハハハ!!



ゴキィィィィ!!!!!



 今度は折れた!!!マジで折れた!!!!!!



「ったく!!では皆様。我が社“Cat Hands Corporation”をよろしくお願いします。八咫 黒羽でした。」

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― 新着の感想 ―
[一言] 楽しいお話でした。面白かったです。 この設定でしたらシリーズ化可能ですよね? 気が向いたら続編かいてください。
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