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図書塔の賢者さま  作者: 空色レンズ
最終章『Brave side』
89/104

(88) ~ 道化の秘密

大変お久しぶりにございます生きてました!!

活動報告も本館ブログも完全停滞していましたが、このままじゃーどうせストックも腐ると思い、溜めてませんが投稿することに決定しました。

まだまだ、登録を続けてくださっている方々には感謝感謝ですよほんとに……。

予定更新数は三話ほとになります。もしも四話目があったら、ちょっと温かい目で見ていただければと思います。

それでは皆様、良いお年を!!

 美鳥たちは結局、フラトールの町にしばらく滞在することになった。本来ならすぐにでもオーデントへ向かわねばならないのだが、表向き彼らは巡礼の旅の途中。体調不良が続いている神官の代わりとなる者は、すでに大神殿から派遣されてくる予定らしい。だがまだ到着まで少し日がある、その間だけ、代役をさせてほしいとシャナが言ったのだ。無論、住民たちは大変喜んでいたし、本当に巡礼中ならこのぐらいの寄り道はなんてことはない。

 この提案に最後まで渋っていたのは、やはりレイヴンだった。町で集めた情報からそう長く拘束されるわけではないらしいと考えて、美鳥とハロードは別に良いのでは無いかと賛成していたのに、だ。結局、美鳥がなんとか取りなすことによって了承してくれたが、レイヴンが納得していないのは明らかだった。

 そうやって今後の行動を決めた滞在初日から二日後。レイヴンの機嫌は恐ろしいほど悪かった。

 この町には、ハロード以上に彼の神経を逆なでする存在がいたからだ。


「やあやあ、またお越し下さったのですねえ! 嬉しいことです、自分は癒やしの術など使えませんからねえ!」


 今日も今日とて神官に一目会えないかと教会へ向かった先で、一行は野菜のたくさん入ったかごを抱えたカップルと鉢合わせた。とたんにレイヴンは無表情になり、一歩距離を置く。完全に警戒態勢になってしまった彼に、内心ため息をつきながら美鳥はカップルに頭を下げる。


「こんにちは、カップルさん。今日は神官さんの加減はどうですか?」

「良くありませんねえ……体力もすっかり落ちてしまいましたし。早く代わりの方が来て下さればいいのですが」


 ひょいひょいと野菜を仕分けて井戸水に浸していく。道化師の格好ながら、妙に手慣れている様子に興味がわいて、美鳥は思わず問いかけた。


「カップルさんって、どうしてここでお手伝いしてるんですか?」


 それに対して、んー、と首をかしげたカップルだったが、野菜を浸し終えると伸び上がるようにして体をほぐす。そしてくるりと体を反転させて、美鳥たちと向き合うと口を開いた。


「いえですね、過去こちらの神官殿が巡礼をしている間、縁あって互いに助け合うことになりまして。巡礼が終わる頃まで一緒にいたのですが、別れ際もし何かあったらできることをしに参りましょうと言っていたら、三週間ほど前に連絡が入りましてね。それからこの町で過ごしながら、彼の手伝いをしているわけです!」

「……お前のような道化が、どうやって巡礼の助けになるというんだ」


 カップルの話を聞いたレイヴンがぼそりとつぶやく。ハロードは苦笑を浮かべてカップルに向かって軽く右手を挙げた。カップルもそれに応えるように、口元に笑みを浮かべて頷いた。二人のやりとりはそっぽを向いているレイヴンに気付かれることは無い。

 結局、カップルが「まだお目にかかるのはやめておいた方がよいですねえ」と言ったため、一行は神官に会えないまま宿へと帰っていった。道中やいのやいのと会話をしている彼らの背を見つめていたカップルだったが、表情を改めると野菜を引き上げて裏口から教会の中へ入っていく。どこか重苦しい気配のする一番奥の部屋へ向かった彼は、野菜の入ったかごを床に置いて扉に手を伸ばしかけ……何かを感じ取り、素早く飛び退く。


「……誰だ」


 その口から、普段の陽気なものとは別人のような、温度の感じられない言葉が飛び出した。すると、扉の向こうからしゃがれた笑い声が響いてくる。

 とたん、カップルは扉を蹴り開け、中へと飛び込んだ。笑い声の主と思われる枯れ木のようにやせ細った男は、ベッドの上で転がっていた。笑い声が止むと、カップルは慎重な足取りで男へ近づいた。


「もう、限界でしょう」

「……カップル君、か……私、私は……」


 男はうわごとのように何か呟くと、赤黒いものがこびりついて閉じられた両目から、一筋の涙を流した。

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