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図書塔の賢者さま  作者: 空色レンズ
最終章『Brave side』
79/104

(78) ~ 同行者たち

 お互いに落ち着いたところで、ファーネリアが出入り口の側に控えさせていた三人を呼び寄せた。


「本当なら、もっときちんとした場で紹介しようと思ったのですが、なるべく早い内に顔を合わせておきなさいとご神託にあったもので、連れてきた者たちです」

「はあ……?」


 じんわりと涙がにじんでしまった目元をぬぐいながら、整列する三人を美鳥は見つめる。ファーネリアが軽く手を向けると、左端にいた少女がぴしりと姿勢を正したまま、口を開いた。


「シャナ=リーストンです! カルトア大神殿に身を置く、治癒魔術師です!」

「コルナ・レイヴン……レイヴンが名です。同じくカルトア大神殿所属、神殿第一騎士です」

「ハロードです。カルトア大神殿所属、神殿第二騎士です」


 そして、彼女に続くようにして鎧姿の青年二人も簡単な自己紹介をしてきた。


「彼らは、三柱からのご神託によって選ばれた、ミドリさんの側付きとなる者たちです。これから共に困難を乗り越える仲間となることでしょう」

「ふあ」


 紹介を受けて、美鳥は改めて三人を見た。

 シャナはふわふわの赤毛をポニーテールにした同年代の少女で、どこかトロンとした空色の目をしていた。緊張は続いているらしく、外套の下でなにやらもじもじしている。

 レイヴンはダークブラウンの短い髪と、同じ色の目をした青年で、無表情ながら何かを睨み付けるように視線を鋭くさせていた。三人のなかで、一番直立不動であり続けている。

 最後のハロードは明るい金髪に緑色の目をした、穏やかそうな雰囲気の青年だった。健康的に日焼けして、鼻の周りにそばかすが散っているその顔は、シャナやレイヴンと比べて大層親近感が沸いた。


「え、えっと、仲間はこちらの三人だけ……ですか? このメンバーで、何か修行の旅とかに出ちゃう感じなんですか!?」


 きっと、神様が選んでくれたメンバーなのだから実力はきちんとあるのだろうが、いかんせん少ないと感じた。RPGならば、前衛二人に後衛二人(片方はほぼお荷物だが)とバランスよしと言えるが、現実だとあまりに心許ない。

 美鳥の心の不安を感じ取ったファーネリアは、少し困ったような表情を浮かべて答えた。


「とりあえず、今の状態でミドリさんの側付きとなれる者は、彼らだけだと……いずれ、他の側付きも現れるとは、おっしゃっておりました。そして修行の旅、とやらですが、突然ミドリさんにそんな無茶はさせられません。しばらくはこの神殿で、この世界についてごく基本的なことをお教えいたします。ただ……」

「ただ?」


 そこで一度言葉を切ったファーネリアは、軽く首をかしげて続けた。


「ミドリさんがこの世界についてある程度お知りになったら、オーデント国の王都へ必ず向かえ、と告げられたのです。世界を救う鍵となる、ミドリさんの召喚魔法についても、そこで学ぶことができるからと」

「オーデントって、さっき言ってた魔法の国ですよね。魔術師がいっぱいいるってことなんですか?」

「ええ、魔術師の人数自体もとても多いですし、魔法の研究も進んでいて、それらを学ぶ環境として魔法学校がいくつかあるぐらいです」

「魔法学校! ファンタジーっぽい!」


 だんだん思考が麻痺してきたのか、諦めて腹をくくったことで好奇心が頭をもたげたらしく魔法学校という地球では絶対にありえない機関の存在に、美鳥は思わずはしゃいだ声を上げた。


「王都には、それこそ王宮の運営する王立魔法学校があるということですから、きっと行く機会がありますよ」


 少し様子が変わってきた美鳥の様子に、ファーネリアは苦笑を浮かべながら答えた。


「とにかく、この世界のことを知らないと……」


 頑張るんだ、と心の中で自分に言い聞かせながら、ぐっと握り拳を作ったところで、美鳥の腹が盛大な音を立てた。ぐきゅるる……、としぼんでいく音に、美鳥は思わず視線を向け、ハロードが吹き出す。


「ぶっ、す、すごい音が……召喚師様、おなか、減ってたんですね」

「ハロード!!」


 笑う彼の頭を、レイヴンが殴りつけた。重い音と共にその場にうずくまったハロードは、「痛い、これホントに痛い」と震えている。

 どうやら、この音のおかげで恥はかいたが、彼らの緊張もほぐれたようだった。


「……ファーネリアさん、そういうことなので、とりあえずご飯ください」

「ふふっ、はい、すぐに用意させますわ」


 袖をつまんで軽く催促をすると、ファーネリアは美鳥の頭を軽く撫でて、笑いながら頷いた。

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