(76) ~ 始まり、始まり
新章にして最終章です。
長い長いプロローグのあと、やっとこさ本編が始まります(え
今回は文字数では無く、場面ごとに文章を区切っていこうと思うので、長い話と短い話でムラがかなりあります。そして、一日一回の更新です。
高島美鳥は、ぺたりと尻餅をついたまま呆然と周りを見回した。自身を囲むようにしている人々よりも数段高い位置にいるらしく、目線の高さはほぼ一緒である。
急なことで、状況が飲み込めないでいる美鳥に向かって、周りから三人の女性が歩み寄ってきた。それぞれ同じデザインの、薄い青、緑、桃色をした服を着ていて、額に着ている服と同じ色の宝石を鎖で飾っている。
「お待ち申し上げておりました、真の喚び手……最高の召喚師様」
「どうか、世界を滅ぼそうとする魔の手から、わたくしたちをお救い下さい」
「身勝手な我らの願い、どうか……」
泣き出しそうな表情で美鳥の前にひざまずいた女性たちに続いて、他に美鳥を囲んでいた白いローブや、黒いローブを着ている人々、そして使い込まれた様子の鎧をまとう人々まで、一斉に頭を垂れ始める。
彼らの言葉を理解した美鳥は、自分が座っている台座に描かれた不可思議な円形の模様……魔法陣の存在を知り、明らかに現代日本とは様相の異なる、荘厳な神殿の深奥、といった雰囲気の現在地を確認して、気を失いかけた。
(これが、噂の、異世界トリップ―――!?)