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図書塔の賢者さま  作者: 空色レンズ
第六章『未来へ』
75/104

(74) ~ 図書塔の管理者

 オズは、ちゃりちゃりと大量の鍵が連なっている鉄の輪をいじりながら、これからの職場へ足を踏み入れた。


「……うっわあ」


 見上げた先にあるのは、本、本、本。

 中央が吹き抜けになっている塔の壁一面が本棚となっており、大量の書物が詰め込まれたそれが天高く続いていた。


「さっくり任命が終わったなーなんかやけに喜んでるなーと思ったら、あのじいさん嫌気さしてたんだな」


 確かに、これらの資料をひたすら整理するなど、気が遠くなる。終わりなどあるのだろうかと思うことだろう。任命式のあと、オズに封印のかけられている書棚を管理する鍵と、管理者の身分を示すメダルを押しつけてこれ以上無いほどの笑顔を浮かべていた老人を思い出し、苦笑する。

 それに、整理を続けたとしても、ここにある資料が役立つ日などそうそう来ないと思っていたに違いない。

 建国のすぐあとに建てられた王宮と同じだけの歴史をもつこの図書塔には、それこそ保存の魔法がかけられた五百年前の資料もあるという噂だが、それらを紐解こうという者はいなかった。その辺りにも何者かの意図を感じるが、関わらないことを決めたオズはあまりそういったことを考えないようにしていた。

 ……あと、この図書塔にある資料は古すぎて、実際使う資料と言えば王宮内に新たに作られたという図書室に保存されているものばかりだというのも、ここの管理がずさんになる原因だろう。


「ま、任されたんですからやるっきゃない。幸い、時間はたっぷりあるしね」


 そう言うと、オズは塔の中をうろうろと動き回った。

 一階のホールは資料をゆっくり読むためのテーブルと椅子が備え付けられているが、ほとんど埃よけの布が被せられていて、その布の上にもたっぷりと埃がかかっていた。

 さらに、前任者ももう使わなくなっていたのだろうはしごや階段にも埃が積もり、色あせた絨毯にはくっきりと足跡が残った。

 途中から面倒になったオズは、階段からふわりと魔法で飛び上がると、もう何年人が踏み入っていないのかわからない最上階までやってきた。


「……あ、さらに階段……屋上でもあるのかな」


 他の階と同じように、ぐるりと本棚で壁一面を覆ったその隅にある小さな上り階段を見つけたオズは、好奇心の赴くままに登っていく。

 その先にあったのは、預けられた鍵によって封印されている扉付きの本棚の列だった。しかも、階下とは比べものにならないほど濃い力が漂っている。


「……魔力じゃあ、ない。そうか、これが建国前の遺産ってことか」


 空間そのものに何らかの術が施されているらしく、ここだけは埃も蜘蛛の巣も存在していなかった。

 しばらく探検を続けていたオズだったが、ある程度で満足すると、埃だらけの塔を空中から見下ろして腕を組む。


「さて、じゃあとりあえずは、掃除と模様替えに専念かな?」


 それから、ゆっくりと右手を正面に伸ばすと、誰も見ていないのを良いことに塔の内部いっぱいに広がる巨大な魔法陣を展開する。


「じゃあ、俺はここで待っているよ。滅ぼされるか、生き残るか……見守ってあげる」


 ぽつりと、誰に聞かれるでもなく呟いた言葉は、塔の中で響いて消えた。

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