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図書塔の賢者さま  作者: 空色レンズ
第五章『世界の底から覗く者』
65/104

(64) ~ 底に巣くうもの

残酷かと思われる描写が混ざります。

血、痛みなどが苦手な方、ご注意下さい。

 巡回一日目は、何事も無く終わった。宿営地を整え終わってから夕食を作る班が指導教官の目を盗み、巡回中に手に入れたとかいう風味の良くなるハーブ……に、限りなく似た毒薬草を鍋の一つに放り込み、その鍋から食べた数名が一発で腹をこわして、今回初めての治癒魔法対象になったぐらいである。

 巡回二日目は、出発して次の目的地へ向かう間に索敵班が盗賊と遭遇し、戦闘となり計二十一名の捕縛に成功した。もしもの時用にとひいていた予備の馬車に詰め込んで、その晩に到着した町にて彼らの身柄を引き渡すところまで、指導教官の見つめる中訓練兵たちと魔法学校生たちが対応した。中でも、戦闘から捕縛、引き渡しまでのすべてにおいて一線を画していたドルグが、印象的だった。

 そして、三日目。


「今日の目的地はアーシアだ。あそこはそれなりに大きい町だから、宿営はなし。それぞれ指定した宿で休むこととする。……はめは外すなよ」


 出発前の指導教官の言葉に、顔を見合わせた訓練生や魔法学校生たちは思わず表情を緩ませた。が、目的地となるアーシアの手前には、この巡回でもっとも広大な森を通過しなければならない。そう思い直し、一行は意識を切り替える。

 歩き出してしばらく。オズは、馬車の荷台の隙間に腰を下ろしていたが、不意にぴりりとした気配を感じ、ざっと周囲に視線を巡らせる。


(今日、みたいだな。こっちの条件がそろった……あと、一度、この近くで)


 思い返すのは図書館やヴィグメールの書斎で、バラバラにされ、大切なところが抜け落ちた資料。


『とにかく、怖かったような、夢見心地のような……思い出そうとすると、どんどん意識が暗くなる。だから、もう思い出そうとする努力はやめたんだ。どうせ、俺は逃げ帰った臆病者であるわけだし』


 せっかく知り合ったのだし、体験したのだしと話を聞きにいくと、失った左目を押さえながら表情を無くすティターヤを見て。

 ああ、やっぱり根は深そうだと。


(死人こそ出ていないし、みんなの怪我も治してはいるけど、昨日の盗賊が残した血の気配が、なくならない……)


 普通の人間ならば気付かない、ねっとりとした気配。それは、前線にいたものに特に絡みつき、服に、体にしみこんでいる。

 何かがこの巡回隊をじっと見つめて、張り詰めていた。そっと目を閉じて精神を広げると、何かと『目があった』。それは、この地面の下……空の上……海の中、世界の根幹にしっかりと根付いている、何百、いや何千というものの存在。


「なに、これ」


 目を開き、これ以上無いほどオズは険しい表情を浮かべる。そんな彼の耳に、少し離れたところにいる訓練生たちの会話が聞こえた。


「あ、なんか見えてきたぜ。あれだろ、森って」

「あれ越えたらアーシアか。よっし、気張ってくぞー」


 のんびりとした会話。彼らは知らない。得体の知れない何かが自分たちをすみずみまで観察しているなんて、思いもしない。

 そこで、オズが巡回隊全体に広げていた意識の網に、とある魔法が引っかかった。


(発生場所は、隊列右前方。探索を指示……召喚魔法!!)


 きっと、森が近づいたことで何か異変がないか、索敵系の魔法が使えるものはそれぞれ情報を得るべく動いただけなのだろう。その中に、召喚したものに見てきてもらおうと思った者がいただけで。

 がたりと荷台の上に立ち上がったオズの瞳孔が、一気に細くなる。遙か前方で、自身の頭上に魔法陣を発動させた魔術師がいた。真っ白な光で構成されたそれから、青く美しい毛並みを持つ鳥の召喚体が現れる。

 召喚体は、一気に上昇して召喚者の頭上を一度旋回すると……鋭く降下し、見上げていた召喚者の喉を切り裂いた。

…………シリアス、ここにきわまれり……orz

明るく、したいな……。

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