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図書塔の賢者さま  作者: 空色レンズ
第五章『世界の底から覗く者』
64/104

(63) ~ 巡回、開始

 ガーティとドルグを合わせた四人で雑談をしていると、準備が整ったのか甲高い笛の音が聞こえてきた。他の面々と協力しながら、テントや荷物を片付けてそれぞれに割り当てられた班ごとにまとまる。ガーティとドルグは馬に乗り前方へ、バルドは他の訓練兵が引く馬に乗り中間部へ、オズは物資を運ぶ馬車の横を歩く護衛班へ。


「オズくん、ルート覚えてるかい?」


 事前に受けていた説明を繰り返されたあと、隊列を組んでソティアを出発してしばらく……オズは御者をしている訓練兵の青年に声をかけられた。


「ええ、王都から南方の町村と、いくつかの森を回って王都に帰還するんだよね。その合間合間に訓練をしつつ」

「そうそう、内容は言っちゃえば簡単だけど、七日間移動しっぱなしっていうのはなかなか大変そうだよねえ」

「ま、馬鹿な野盗だのなんだのが来なければ、体力的には問題ないだろうけど」

「あんまり出て欲しくないなあ……成績は上げたいけれど、あんまりいい気分にならないし。この辺治安悪いんだーなんて思いたくないし」

「……けど、それなりに出没情報のある地域を選んだりしているっぽいから、確率はかなりのものだよ?」

「そーなんだよねー」


 あー、と息を吐く青年、メイガスは隣を歩くオズにちらりと目を向けると、ばしばしと荷台を叩いた。


「ていうかオズくん、他の魔術師もさーみんな馬だの馬車だのに乗っちゃってるんだから、君も遠慮しないでいいんだよ? ざっと見、もう君しか歩いてないんじゃない?」

「え、まさかー。だってまだ太陽もちょっとしか傾いてないよ?」


 答えつつ周囲を見回すと、確かに攻撃魔法に特化したバルドのような魔術師は最初から馬に乗っているのでいいとしても、オズ以外にも物資護衛班に入れられた魔術師は、出発時こそきちんと歩いていたものの、今はほとんどが荷台の端に座ったり立ったりして周囲を見回していた。


「やっぱり、年がら年中剣振り回したり、走り回ってる俺たちとは基礎体力も違うし、ね? 気持ち悪くなる前に、休んでよ」

「あらー、みんなあっさり楽しちゃって……まあ、そういうならお邪魔するよ」


 メイガスの言葉に苦笑を浮かべたオズは、速度を緩めようとした彼を手で制して、ふわりと魔法で浮かび上がって空いていた御者台の端に腰を下ろした。


「次の町には、予定じゃ日が暮れる少し前に着くってあったよね」

「ええ、で、もう少し進んだところにある村の側に宿営すると」

「まあ、この人数じゃ中途半端な町じゃあふれちゃうしねー。狙うとしたら三日目に到着予定のアーシアかな」


 あっちは美味しい鶏肉料理があるんだよ、と笑いながら話すメイガスに、オズも興味深そうに相づちを返しながら、そっと空に視線を向けた。

 雲一つ無い、晴天。


(……今日は、違うな)


 けれど、今まさに『何か』へ向けて、彼らは進み始めていた。

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