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図書塔の賢者さま  作者: 空色レンズ
第四章『召喚魔法と世界の理』
57/104

(56) ~ オズのレポート

 オズが『貴石』に移って、半年が経過した頃。

 ヴィグメールの書斎で本を読んでいたオズの元へ、少し前に彼が提出した、召喚魔法に関するレポートを握りしめたメルベロートが押し入ってきた。


「貴様は一体何を考えているんだ!?」

「ちょ、うるさい」


 ノックと挨拶もそこそこに、書斎にいるのはオズだけだと知ったメルベロートは、遠慮無く扉を開け放ったとたん怒鳴りつけてきた。そして、だんだんと対応になれてきたオズも、彼の声を聞いた瞬間に座っていた椅子ごと空中に浮かび上がり彼と距離を取る。

 ぴたりと空中で制止した椅子の上で、変わらぬ速度で本を読み続けるオズの姿に一瞬ほうけた顔をしたメルベロートだったが、なんとか自力で我に返ると握りしめた紙束をを振り上げる。


「この! 召喚魔法についての可能性とやら!! 貴様が出したレポートだろう!? 召喚魔法を専門ともしていない、何が専門かもはっきりさせていない貴様がなぜこれを出す!?」

「えー、師匠に何か考えついたこととか、新しい魔法陣とか思いついたら提出して欲しいなせめて半年に一回くらいは、ってぼそっと言われたから、前々から考えてたことを適当に書いただけだけど」

「前提からしてぶっ飛んでいるこれを!! 適当に書いたなどと無責任な発言で片付けるなあっ!! これのせいで召喚魔法を研究している他の魔術師が大混乱だ!!」

「そんなにぶっ飛んでた?」

「ぶっ飛んでいるとも!!」


 オズが提出した召喚魔法のレポートに書かれているのは、何のことは無い、魔力の形状で召喚魔法への適正が変わるのだとしたら、その魔力の形状を変えるか、もしくは持っている魔力の形状が適している召喚対象の存在する異界を見つけるか、そのどちらかにすればある一定以上の魔力を持つ魔術師であれば、誰でも召喚魔法が行使できる、という内容だった。

 この世界における召喚魔法というのは、自分たちとは違う世界と交信、契約を交わし、一定期間こちらの世界にやってきてもらうというものだ。呼び出された者の例として、巨大な翼を持ち火を噴くトカゲ(オズからしてみればドラゴンだろうと思うのだが、その語彙が無い)、両腕と足が鳥のそれである女性、人に限りなく近い姿ながら見たこともない高度な魔法を操る人々、手のひらほどの大きさで背中に虫の羽が生えている者たち……などが挙げられる。

 彼らはこの世界に召喚されるとかりそめの肉体を得て、召喚者のみと念話を交わすことができるようになる。そして、召喚者が契約時に望んだことを実行して、完遂すればそのまま消えてしまうのだ。


「おまけになんだ、召喚体の、召喚者以外との意思疎通!? この最後の方にちらっと書かれてることも意味がわからん!! 召喚体はこちらの言語を話せないのだし、だからこそ魔法陣で契約している魔術師と意志そのものを伝え合って会話をするのだ!!」

「だあー、本が読めない……。一回存在を認識しちゃうとやっぱりダメだな」


 がんがんと怒鳴りながらレポートを否定してくるメルベロートに、うんざりした声を上げるオズだったが、やがて諦めて本を閉じると、足を空中でぶらぶら揺らしながらメルベロートを見下ろす。


「別にさあ、そーゆーふうになったらいいねえみたいな感じのものでもあるわけだからさ、そんなぎゃあぎゃあ騒がないでよ」

「……お前は本当に、創立以来の天才か?」


 メルベロートは怒鳴り疲れたのか、肩で息をしながら気だるげに返事をするオズを苦々しげに見つめていた。

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