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図書塔の賢者さま  作者: 空色レンズ
第四章『召喚魔法と世界の理』
56/104

(55) ~ 『世界』の事情

(この世界について、知ったこと)


 しばしヴィグメールをからかって遊んだ後、他の魔術師が書斎を訪ねてきたので、ヴィグメールはそそくさと彼らとともに外へ出ていった。一人書斎に残されたオズは、羽ペンをいじりながら目の前の紙に書き付けていく。


(この世界には、人間以外の知性を持った種族がいない)

(魔法がありながら、それらはすべて人の内に宿る魔力でのみ行使され、精霊のような概念もあまりない)

(魔法は、とある神から授けられた能力と伝えられている)

(魔法を使えるのは、人間しかいない)


 カリカリと、やや乱暴な筆跡でつづられる内容を見直したオズは、ほおづえをついた。


「……普通、こういう世界ってもっといろんな種族がいそうなものだよねえ? エルフとかさ、ドワーフとか、獣人とか、妖精とか。どこかの秘境にでも引きこもってるのかと思えば、文献すら見当たらないなんて……ホントにいないの? 人間しか魔法が使えないってわりに、一般的な魔力の保有量も全然少ないし」


 それでもって、とオズが手元に引き寄せたのは、数年前までの軍事記録の略歴だ。なぜ魔法学校長の書斎にそんなものがあるのだろうと思ったが、ティターヤのような魔術師も所属しているからかと考えて、勝手に見ている。


(オーデント国は、東側の国土が海に面したそれなりに広い国だ。そして、西側の国境をぐるりと囲むように位置しているヴィスト国と友好関係を結んでいる。こっちが魔法に力を入れている国なら、山の割合の多いあちらは戦士の国だもんな。で、ちょうどその国境のど真ん中に、二国が信仰しているカルトア神教の総本山がある宗教国、リンブルーリア国がある)


 さて、とオズは地図を睨みながらつぶやいた。


「海の向こうの国なんかはまだ見つけてない、接触してないし、陸の方はヴィストがいるから侵攻されることはないんだけど……じゃあ、たまにこっちの記録で出てくる、突然の虐殺みたいな記録はなんだろ?」


 軍記の略歴を見ていくと、どこかしらでぽつぽつと、東西南北で十何年か置きに争いのようなものがあるのだ。ちょうどティターヤがこの学校に戻ってくる前にも、硝子の都とまで呼ばれていた工芸都市で、住人の半数以上が死んでいる事件がある。


「……んー、困ったな。どうせだったらもう何十年かほっつき歩いて情報を集めてからここに来るべきだったかな? ああ、でもそれだとみんなに会えないし、ヴィグメールも死んじゃってるだろうしなあ。まあ、過ぎたことはいいか」


 オズは軍記を元の位置に戻すと、書き付けに魔法の火をつける。灰も残さず燃え尽きたそれを眺めたあと、だらりと力を抜いて椅子の背もたれに体重をかけ、天井を見上げる。


「『異形のもの』、ねえ……。異種族はいない代わりに、魔物はいるって感じなのかな」


 詳しく残されていない資料にやや苛立ちを感じながら、オズは「面倒くさい、ような気がする」と一人ぼやいた。

さらりと、この世界について。

そして、オズの発言はいろいろとアレですね。

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