(05) ~ こっそりと
『訳あり』手形は、確かに中途半端だった。
ふらふら街中を歩いて、なんとなく入ってみた服飾店で、スカーフを見ている間に手形の提示を求められたので、それを見せてみれば店員が若干頬を引きつらせて、出入り口へと彼を案内した。
他にもいろいろな店を試してみて、大丈夫だったのは手形の掲示がいらない飲食屋台ぐらいじゃなかろうか。そこで串焼きを買って、果実水を飲みながら町を眺めていると、なにやら難しい顔をした少年少女がちらほら、通りを行ったり来たりしている。
なんだろうと観察していると、屋台の店主が教えてくれた。
「ありゃ、魔法学校の入学候補生かな。もう一月もしたら入学試験があるはずだし、その準備だろ」
「へえ、彼らが」
もう一度、彼らを見る。オズよりも四、五歳は若く見える彼らは、書物を抱えながら何事かつぶやいて通り過ぎていく。
オズは立ち上がり店主に礼を言うと、しばらく少年たちのあとをついていき、途中でふっと路地裏に紛れた。そして、息をするように自分の体に命じる。
(十四歳くらい、になればいいかな)
目を閉じ、開くと、視点が若干低くなっていた。服装は変わっていないが、近くの水たまりをのぞき込むと、少し幼い風貌に変化していた。にこりと笑って、一人頷く。
(やっぱ、面白い方がいいよね)
そして、探査の魔法で探し出した先ほどの少年たちを、また追いかけはじめるのだった。