(46) ~ やがて再戦を
合同演習は、決勝戦の翌日でやっと終了を言い渡された。決勝戦の内容があれだったので、これを正規の成績として保存していいものかと教官たちが真面目に悩んだせいで表彰式が遅れ、さらにその後に行われるはずだった合同親睦会も予定が押されてあっさりとした内容で終わってしまった。その中でマインダーが「閉幕宣言忘れたっ!」とばたばた騒ぎ出したところ、翌日魔法学校生たちが出発する前にすればいいと投げやりな解答が出され、今に至る。
初めて会ったときに比べて、ずいぶんやりづらそうな表情で閉幕宣言と簡単な挨拶を終えたマインダーは、今回参加した訓練兵たちを整列させると、馬車に乗り込んでいく魔法学校生に向けて敬礼を指示した。
「……オズ!」
「ん?」
そこで、馬車に乗り込もうとしていたオズに、声がかけられる。声の主を確認したマインダーは、げ、という表情を浮かべた。
「ドルグ、お前なあ」
「オズ、次に会うとき、もう一度俺と勝負をしてほしい。これへの返答は!?」
マインダーに肩を押さえられながらも、敬礼姿勢を崩さないまま大声で問う彼に、この場にいる人間全員の注目を集めたオズは……。
「ま、会う機会がありましたら、やりましょうか」
そう、返して馬車の中へと姿を消した。
……やがて、魔法学校生たちが全員馬車に乗り込み、列をなして訓練場を出発する様を見ていたドルグは、マインダーから解散の言葉を聞くと即座にきびすを返す。
「ドルグ、俺たちすっ飛ばして魔術師に再戦申し込むってどういうことだよ」
そこへからかい口調で声をかけながら近づいてきた青年がいた。ガーティである。
「彼と会う機会は今後あるか分からない。だから、先に言っておいたまでだ。当然、君たちとももう一度戦うつもりだが」
「…………え? 何、今の、空耳? ドルグ、お前認めた相手にしか本気出さないって……」
「そうしていたら、彼と向き合う場面になっても、俺はろくに動かずに彼を見定めようとばかりしていた。最初から本気で挑んでいれば……この気分の悪さをどうにか出来たかもしれない」
だから、と言ってドルグはガーティを振り返る。
その顔には、どこか意地の悪そうな笑みが浮かんでいた。
「もう、格下だのなんだのと言って、機会をふいにするようなことはしない。……君たちも、存分に叩きのめしてやろう」
「うわこえぇ」
ドルグの宣言にガーティは引きつった笑みを浮かべて、この演習をさんざん引っかき回してくれた魔術師に心中で悪態をつくのだった。
こうして、訓練場にもライバルが出来ました。
オズのせいで、ドルグと同期の訓練兵や先輩方はそりゃもうぎったんぎったんにされ始めます。
ある意味、より真面目になったので教官たちは嬉しいのですが、やられる訓練兵にとっては嫌なものですね!
ここで、第三章は終わりです。次から第四章、また時間が飛びます。




