(38) ~ お疲れ様
次の試合までの準備期間中、簡単な打ち合わせを終えたオズは医務室へ向かっていた。
「失礼します」
「……ん、君、次の試合の……」
「ちょっと彼の様子が見たくて」
ベージュのローブにエプロンを着けている医療係の女性に断って、簡素なベッドに寝かされているレイルの顔を見る。
包帯を巻いた頭を水枕にのせて眠っている彼は、ざっと見ただけでも目立った外傷はないようだった。ほっと安堵の息を吐いて、軽く頬をつつく。
「お疲れ様、すごい頑張ったよ、レイル」
それだけ言うと、オズは女医に頭を下げて医務室を出て行く。そして、目を伏せたまま言う。
「彼、すごいですね。魔法の才能まであるんですか」
「……あんな芸当が出来るのも、今いる訓練兵ならドルグぐらいだろうな。身体強化が使えるってやつなら、他にもいるけどよ」
壁により掛かっていたガーティは、さっさと歩き出していたオズの隣に並んでいく。
「で、お前の同期に聞いたんだけどよ、次の俺たちの相手って貴族で、魔法もかなり使えるヤツがいるんだって?」
「ええ、三年目の中では次席です。ウェストラードって家名、聞いたことありません? そこのお嬢さんだそうで」
「ガチで上流貴族じゃねえか。てか、なんで次席って断言してるんだ? 魔法学校の方は、なかなか成績を開示しないって聞いたけどよ」
「俺が主席で、次に才能があるなあと思ったのは彼女だけなので」
「…………当然の如く言うな、お前」
オズの言葉に思い切り顔をしかめたガーティは、しかしすぐに笑い出す。
「しっかし、だんだん慣れてきたけどよ、お前本当に生意気だな。でもって変だな」
「変、って……」
生意気だと言われるのはまだ分かるような気がするが、変だというのはどういうことだと首をひねる。すると、ガーティはこう付け足した。
「最初に俺が舐められてたときも、今も、お前は結局自分の能力を鼻にかけるってことをしてねえのが変といえば、変なところだな」
その言葉に、オズはガーティに見られないよう、軽く口元を押さえる。
(ごめんガーティ、ぶっちゃけると鼻にかけるというか、そもそも比べるラインじゃないっていうのを自分で理解してるから、自分基準で考えるってことをしてないだけなんだよ……)
ある意味、すべてを舐めているオズであった。
ガーティは無言になってそっぽを向いたオズに、いぶかしげな目を向けながらも、これ以上は面倒だなと考えて前を向く。
そろそろ、彼らの出番が近づいてきていた。




