(34) ~ 歩み寄れば
その日はもう一つのグループと試合を行い、今度はガーティたちもジーノたちの陣形に何も言わず、初戦ほど手こずらないまま勝つことが出来た。
食事の後、昨日と同じように各グループごとの訓練を指示されたあと、割り振られた訓練部屋に集まった一同は無言だった。
「……おい、オズ、だったよな」
沈黙を破ったのは、ガーティだった。オズは名前を呼ばれて、ん? と首をかしげる。
「なんでしょう」
「お前、伝達魔法が使えるならさっさと言えよな。そいつらが妙に素早く動いたりしてたのも、お前が指示出してたんだろ」
「当たり」
にっこりと笑ってガーティの言葉を肯定したオズは、不機嫌そうな顔つきのままのガーティに頭を下げた。
「少し遅くなったけど、意地を張っていてすみませんでした。俺が内心、どう考えているか……すっかりバレていたとは思わなくて」
そのまま頭を上げないオズに、ガーティはしばらく言葉を失っていたが、ソロルが目で「何か言ってやれ」と語ってくるのに気付き顔をしかめる。
「バレるだろ、あんなどうでもよさそうな態度取られたらよ」
「ええ、自己紹介のときに、問題児だのめんどくせえだの言われて、ちょっと虫の居所が悪くなりまして」
そのままいい加減に接していたら、嫌な空気が出来上がっていたんですよね、と言ってオズは頭を上げた。
「確かに、俺は学校きっての問題児だと言われたこともありました。でも、友人たちのおかげで、なんとか学校生活に復帰して、そのあだ名も忘れかけていた頃だったんですけどね。久々に言われて、自分でも驚くくらい頭に来たというか、いや逆に冷めたというか」
「……悪かったよ。軽い、冗談のつもりだったんだ」
「冗談にしてもタチが悪い。ガーティ、お前今までそれで何回喧嘩沙汰起こしたと思ってるんだ」
ガーティが謝罪の言葉を口にしたところで、ソロルが深いため息とともに言う。
オズとガーティが、それぞれ意地の張り合いをしていたことを謝ったことで、巻き込まれるように嫌な関係になっていた他の者たちも次第にばつの悪そうな顔で互いに謝り始めた。
「突き飛ばして、悪かったよ」
「こっちも言い過ぎた」
「今日の援護、すげえ助かった。ありがとう」
「こちらこそ、強化したとはいえあんな攻撃耐えられるなんてすげぇな」
「前の試合、炎の魔法から守ってくれたでしょ、助かったよ」
「い、いえ! 無我夢中でしたし、ど、どういたしまして!」
謝罪から感謝へ、今日の試合の中で形作られた交流のきっかけ。
「なあ、明日からは勝ち抜いた奴らばかりと当たるからな。しっかりと作戦立てて行こうぜ。あと、オズもなんか案があったらさっさと教えろよ。伝達魔法みたいによ」
「了解」
昨日とは打って変わって、ぎこちないながらも確かに穏やかな関係が築かれ始めたことに、オズはほうと安堵の息をついて、今後の作戦を語るガーティの声に耳を傾けるのだった。
やっとまともそうな雰囲気になってきたところで……。
次で話は飛びます。
あっという間に、準決勝です。
なんでか『彼ら』が勝ち抜いて、久々登場のあの人もやってきます。




