(32) ~ 第一試合【中編】
「っ、おい、抜かれ……!」
たぞ、と言い切る前に、バァン! と何かがぶつかる激しい音がすぐ側から聞こえてきた。ガーティの背後を見てぎょっとしている相手を、好機とみて思い切り後ろに押しのける。距離を取ったところで軽く後ろを見てみると、顔を押さえてふらついている先ほどの剣士の姿があった。
「ああ?」
疑問の声を上げると、今度は剣士の足下が小さく爆発を起こす。はっとしてみれば、フィナとその隣にいた攻撃魔法担当がこちらに杖を向けていた。
「い、今です、押し返して下さい!」
フィナが叫んだ言葉を、頭が理解する前に体が動く。動転している剣士に近づき、体勢の崩れたところへ剣を繰り出した。ぎりぎりのところで気付かれ後退されてしまったが、フィナの結界にぶつかったためであろうダメージは抜けきっていない。
と、追撃をしようとしたガーティに向けて、氷のつぶてが飛んでくる。敵側の魔法攻撃のようだったが、ガーティに当たる前に「防御します!」との声かけとともに現れた結界で、すべて弾かれる。
(なんか、急に動きがよくなってねぇ?)
そこで、よく自分たちのグループを見てみれば、盾役と剣士役で向こうの前衛を三人押さえている彼らの後ろで、ジーノともう一人の攻撃魔法担当が杖を振っていた。彼らもしっかりと声を出しており、さらにソロルの矢が援護に入ってくるので、敵もせめあぐねている。
ガーティともう一人の剣士には、結界役と攻撃役が割り振られていたらしいと気付いた彼は、では最後の、一番気にくわないあいつは何をしているんだと振り返ると、彼は口元に片手を寄せて、何かをつぶやいていた。
(ガーティさん、集中しないと突破されますよ)
「はあ!?」
と、オズと視線があったと思った瞬間、脳内に彼の声が響いてきたのに驚いて飛び退く。すると、その間を狙って体勢を整えた敵兵が二人突っ込んできた。しかも、今度はジグザグに走り込んでくるので、フィナたちもうまく魔法を当てることが出来ずにいた。
「くっそ!!」
悪態をついている間にも、攻撃魔法担当は剣を向けられてメダルを奪われているし、なんとか結界で耐えているフィナも限界が近そうだった。
さらにそこへ、先ほどの氷魔法が可愛く思えるほどの密度を持った、火球が飛んできた。
「おらおらおらよそ見してっとあっという間にやられるぜえ!?」
ガーティたち前衛が崩れたところを見計らって、バルドも前線に出てきていた。彼は試し撃ちをした火球が、地面に当たってはじけるのを見るともう一つの火球を作り出す。




