(31) ~ 第一試合【前編】
オズたちの対戦相手は身軽そうな剣士たちが多く、その背後では旗の周りに固まる魔法学校生と……剣士たちとほぼ同じ位置に並んでいる男子学生が一人。
「最初っからお前のいるグループと当たるなんてなあ!」
「うわあ、暑苦しいのと当たっちゃった」
「んだとこらぁ!?」
隣に立つ訓練兵と比べるとさすがに少しばかり細く見えるバルドだったが、魔術師と言うには精悍すぎる方なので、彼を見た他の訓練兵は「あいつ本当に魔術師か?」としきりに同じグループの魔法学校生に尋ねていた。
対戦相手のなかにオズがいることをいち早く察したバルドは、杖を構えながらどう猛な笑みを隠そうともしていない。
「バルド、頼むからもう少し下がってくれ。陣形については最初に言っただろ」
「ううううう、オズのヤツと正面から戦れるってのに……!」
地団駄を踏みながらも、前衛と後衛のちょうど中間地点にまで下がったバルドに、オズはほっと一息つく。また自分のせいで、バルドが向こうのグループメンバーと諍いを起こすなど、してほしくなかったからだ。
向こうが典型的な陣形なのに対して、オズたちのグループは少々変わった陣形を取っていた。
まず、ガーティ率いる盾役一人を入れた剣士組が前衛に出ているのはいい。ソロルも最初は剣で戦おうとしていたが、オズの頼みで弓兵として旗の側に立っている。弓は極力殺傷能力を押さえるため、先端が丸くなっているが当たれば当然痛い。
そして、後衛の魔法学校生はというと、オズ以外の四人それぞれが距離を取りつつ、旗では無く前衛の数歩後ろで構えていた。ちょうどバルドが立っている位置と近い。オズ自身はソロルと一緒に、旗の側に陣取っていた。
「お前ら邪魔だ、下がれ下がれ!」
盾役がうっとうしそうに言うと、彼の後ろにいたジーノは一瞬嫌そうな顔をしながらも、少しだけ後ろに下がった。だが、他の三人はちらちらとオズの方を見つつ、動こうとしない。
(何考えてやがる、あいつ)
ガーティは自分の後ろについているフィナに目を向けるが、彼女はしっかりと杖を握り、上目遣いに彼を見返してきた。そこで、昨日苛立ち紛れに彼女のことを怒鳴りつけた自分を思い出し、自己嫌悪に駆られてさっさと前を向く。
(ちくしょう!)
ゆっくりと、教官の両手が上がる。
「それでは、試合開始!!」
そして、それが振り下ろされた瞬間、敵味方の前衛がそろって駆け出した。ガーティが向こうの剣士一人と鍔迫り合いになったとたん、隙間を別の剣士に抜かれる。しっかりした装備に似合わないその俊敏さと、妙な風の気配で、移動を補佐する魔法を受けているのだと瞬時に理解した。