(30) ~ 手伝ってほしい
「まあ、ガーティさんが俺のこと許してくれれば、なんとか挽回できるかな?」
「昨日も言っていたけど、オズ、ガーティさんになにかしたの?」
そっとフィナに問いかけられてそちらを振り返ると、彼女と似たような表情を浮かべたジーノや、他の魔法学校生たちの顔が見えた。
「ん、多分ね。俺がそうそうに見切りをつけようとしたから、ガーティさんは俺に苛ついてるんだよ。で、連鎖的に彼と一緒にいた人たちも、俺に対して悪感情を持ったんじゃないかな。どうにも、ソロルさんよりはガーティさんと親しげだったし」
「見切りをつけたって」
「ほら、魔法学校じゃもう前のことって言われてるけど、俺、一応問題児だったじゃん。久々にそれ言われて、あまつさえメンドクサイもの扱いされたから、「あ、いいやコイツ」って思っちゃって」
「……オズ、お前結構沸点低いのな」
俺らはとばっちりかよ、とジーノが頭を抱える。
「まあ、口に出してなかった分、気づかれないかなあって思ってたんだけど、あっさり腹の底バレてたみたいで。あとはやっぱり、俺が初級魔法ばっかり使ってたせいかな?」
「……それでも、どの属性も無詠唱でさくさく使ってたってところに気づいてほしかったけどなあ。あんなんできるの、オズしかいねえよ」
「ま、それを魔法学校の外の人に言っても、しょうがないでしょ」
あははと笑って、オズはもう一度ミリアたちのグループに目を向ける。すると、話をしている間に決着がついてしまったようで、ミリアたちの守っていた旗を、少しぼろぼろになっているリルドが高々と掲げていた。
「あちゃ、負けちゃったか」
「そういや、俺たち次の試合に出るぞ。確か向こうの区域で」
「はあー、どうせバラバラになっちまうもんなあ。あんなふうに連携なんか、俺らできねーだろうし」
すでに負けたものと思っているメンバーは、ぞろぞろと移動を開始する。と、そんな彼らのローブが一斉に引っ張られた。
「うおっ、何すんだよオズ?」
「あのさ……俺が引っかき回しておいてなんだけど」
ちょっと協力してくれない? と片目をつむって両手を合わせるオズに、メンバーたちは戸惑いながら顔を見合わせた。
そういえば、一応入学してそれなりに経ったので、魔法学校生側は十七、十八歳くらいの人たちばかりです。オズも当然成長しています。
訓練兵側も同年代か、少し年上の二十歳くらいの人が集まっています。
合同演習だのと言いつつ、学校同士の交流みたいなもの……なんですね。
ちなみにほとんど成人している人ばかりなので、そうそう教官も、グループ内の不和になんて首突っ込んできません。各自で処理すべし。