(29) ~ 観戦中につき
翌日。広場の壁にトーナメント表が張り出され、それぞれの対戦相手が発表された。
最初のうちはグループが多いので、広場をロープで三つに分け、それぞれの区域に教官一人と魔術教師一人が審判として立っている。一気に三つの試合を消化するのだ。
ルールはシンプルで、敵グループを全員戦闘不能(この場合気絶、もしくはケガによる歩行困難など)にするか、各自が胸につけているメダルを取り外して降参させるか、陣地後方に設置してある旗を手に取ることで勝利が決定する。基本的に、前衛同士が削り合っている間に、いかに後衛が敵後衛に打撃を与えられるかがポイントになる。
オズたちのグループはなんとか全員集まっていたものの、空気は最悪のままだった。睨み合っている訓練兵と魔法学校生の間に入って、衝突が起こらないようにしていたソロルだったが、ガーティがいぶかしげにオズの方を見ているのに気づき、首をかしげる。
「ガーティ、どうした?」
「……いや、なんでも」
そのままぷいとそっぽを向いてしまったガーティに、さらに首をひねりながらオズの方を見る。と、ばっちり視線が合って、彼はにこりと穏やかな笑みを浮かべると軽く頭を下げてきた。
ソロルとガーティがオズの変化に戸惑っていると、さっそく最初のグループの試合が始まった。歓声の聞こえる中央の区域へ向かっていくオズに、気づいた魔法学校生たちがわらわらとついて行く。
「オズくん、誰か応援したい人、そっちにいるの?」
「うん、ほら、ミリアが出てる」
「あ! ホントだ! ミリアー、頑張れー!」
ロープの側にやってきて区域の中を覗いたオズの隣で、フィナがぶんぶんと手を振った。だが、目の前で剣を打ち合っている光景に怯えているのか、ミリアの魔法にキレは無い。
「そっち行ったぞ!!」
「結界、出します!」
盾役の訓練兵が、素早く間を抜けた片手剣持ちの敵兵を見て叫ぶ。すると、旗の側で待機していた魔法学校生が、素早く結界魔法を展開した。
「あ、足止めするです!」
そこで、正面に作られた結界を迂回するように走り込んできた敵兵に向けて、ミリアが杖を振る。詠唱もなく放たれた水の球は、ばしゃばしゃと敵兵にぶつかり、ダメージこそ無いもののひるませることが出来た。
「つめてっ!?」
「うりゃ、リルド、覚悟っ!」
そこへ盾を構えていた訓練兵が突進し、陣地から敵兵を吹っ飛ばした。リルドというらしい敵兵は、気の抜けた声を出しながらもしっかりと受け身をとり、再度特攻する隙を探し始める。それを援護するため、後方から彼に向けて補助魔法と、盾役をひるませるための攻撃魔法が飛んできた。どうやら、ミリアの相手グループの要は彼らしい。
「……すげー」
結局、ソロルから訓練兵側でよく使われるという合図や、それの応え方などをいろいろレクチャーしてもらうことは出来たのだが、協力すべき相手がすでにいなくなったあとだったので、実際にそれを使ったことは、オズたちのグループは無い。
だが、うまくやればあんな風に連携をとることができるのだと、目の前で繰り広げられる剣と魔法の攻防は見せつけてきた。
 




