(27) ~ チームワーク・ゼロ
その後、合同演習のために解放されている別の訓練部屋へ移動した一同は、どこかぎくしゃくした動きで、連携などとれそうになかった。訓練兵同士、魔法学校生同士ならマシなのだ。だが、いざ前衛の動きに合わせて魔法を放とうとすると、タイミングがずれたり、攻撃魔法が味方に着弾しそうになったりとろくなことになっていない。そのたびに魔法学校生は謝るのだが、あまりに繰り返されすぎて、訓練兵の方もうんざりした空気を放ち始めている。
そして最も場の空気を乱していると言えるのが、オズとガーティの二人だった。オズの嫌な予感は当たり、気質もバルドに似ているガーティはオズが後方から出す指示に決して従おうとせず、さらにオズもガーティの高圧的な命令を無視するので、チームワークなど生まれるわけもなかった。
「おい!! お前盾の横に敵が回り込んできたら、さっさと結界移せよ! どんくせぇな!」
「ご、ごめんなさい……」
「あとお前だ、お前! なんであっちに補助かけんだよ、俺だろ!?」
「えー、ついさっき補助かけたら、力加減分からなくなるから急に発動させるなって怒鳴ってたから、俺もジーノも補助やめただけだけど」
「お、オズってば……!」
オズはガーティに怒鳴られた結界魔法が得意な女子生徒フィナと、補助魔法が得意な男子生徒ジーノを背にかばって笑みを浮かべた。最初はオズに対してのみ刺々しく接してきた彼だが、今では魔法学校生全員に苛立っている。こうして無駄な口論を続けるのもなあ、仲良くなろうとは思わないけど、どうにか屈させることはできないものかね、とオズが考え込んでいると。
「軟弱なお前らを守りながらこっちは戦わなきゃならねえんだぞ。だっつーのに、んだよ、そのふてぶてしい態度はよ! 魔法がろくに使えないなら、本当にお荷物じゃねえか!」
「なっ……こっちが合図を出してるのに、ろくに返事もしないでいるから動けないんだよ!」
とうとう、ガーティの物言いにキレた魔法学校生が言い返した。これにはガーティどころか、ソロル以外の訓練兵たちが気色ばみ、さらに状況が悪化する。オズ対ガーティという微妙な拮抗が崩れた瞬間だった。
「合図なんて悠長なもんに反応してる暇、実践であるわけねえだろ。お前らが俺らにしっかり合わせれば良いだけの話だ」
「ていうかもう、お前ら旗だけ守って後ろで引っ込んでろよ。結界役いるんだろ、そいつが全員囲ってれば、こっちも楽にやれるってもんだ」
「みんな、ちょっと落ち着け!」
どうやら、バランスが良いと思っていたグループは、血の気の多い者が集められたものだったらしい。ソロルの必死の取りなしもむなしく、互いに引っ込んでいろ、指示を聞け、と一歩も譲らない口論は、ガーティの次にキレた訓練兵の行動で終わった。




