(23) ~ コルコトアへ
そうしていつも通りに過ごしているうちに、あっという間に合同訓練の日程が近づいてきた。訓練そのものは、敷地を広く取っている訓練場で行うため、魔法学校の生徒たちは事前にコルコトアへ移動することになっていた。
その道中で、『原石』たちの反応は様々であった。軍属希望を持つ者は燃えに燃え、研究畑へ進みたい者は葬式前のような陰鬱な表情をしている。そのどちらでもないものは、適当にやれば良いかと深く物事を考えていないタチの人間だ。
「……オズくん、今日ばかりは、オズくんのその余裕がほしくてたまらないよ」
「レイル、本当に顔色悪いぞ」
集団で馬車の中に乗せられ、野営も立派な訓練だと二日間の旅路を終えようとしていた一同は、基本的に体力の少ない魔術師であるためほとんどが顔色を無くしつつあった。普段通りなのは、一部の脳筋魔術師と教師陣、その他である。
そして、顔色の悪くなっていないその他に属するオズは、他の面々に気づかれないように、レイルの背中をさすりながら治癒魔法を施した。深呼吸を繰り返して、水を飲んでとかいがいしく世話をすると、少しずつレイルの顔色もマシなものに戻っていく。
「ありがとうオズくん。……ああ、どうしよう。どうすればいいかな?」
「まあ、直接戦うのは訓練兵の方だけだし、魔術師の方は降参すれば攻撃されないことになってるからさ、どうにもならなかったら、メダルを捨てて降参するのが手っ取り早いよ」
ああそうか、そうだね、でもうまくメダルが取れなかったらどうしよう。そうやって延々と悩んでいるレイルに、気づかれないようにオズはそっとため息をついた。魔法学校を出発してから、ずっとこの調子だ。この分だと、普段から明るいミリアもずいぶん参っていることだろう。
(食事の度に見るバルドは、ずいぶん元気だったよなあ。あいつ、絶対どこかで筋トレしてたな? 基礎体力が引きこもり魔術師とは思えないし……あ、そういえばティストンさんたち、応援に来るって言ってたなあ。別によかったのに)
つらつらとそんなことを考えていると、ガランガランと鐘の音が鳴り響き、ゆっくりと馬車が止まった。揺れが無くなってほっと一息をついた者も入れば、より一層顔色を悪くする者もいる。
とうとう、コルコトアに到着したのだ。