(22) ~ 合同演習
コルコトアとは、オーデント国の王都からほど近い場所にある町で、王都に次いで二番目に大きな町だと言われている。そこにはもう一つの魔法学校があり、さらにレイルの言っていた魔法具研究所、そして王国軍訓練場が存在している。
コルコトア魔法学校は、実技を重視し科目も多岐にわたる王立魔法学校と異なり、魔法具の作成に重きを置いた、少々特殊な学校である。もう一つある施設、王国軍訓練場はその名の通り、将来軍属となって働くことを望む少年たちを育成する場所であり、これがあることから、魔法の都と呼ばれる王都と並べて騎士の都と呼ばれている。
「来月だろ、訓練場の訓練兵たちとの合同演習! 俺、すっげえ楽しみなんだよな!」
合同演習という言葉を聞いて、テンションが突き抜けてしまっているバルドとは対照的に、レイルとミリアはずずん、と落ち込んでいた。他にも、彼らと同様に食堂でくつろいでいた生徒の中で、バルドの言葉を聞いて肩をすくめる者や、闘気をみなぎらせるものと対照的な反応を示している。
「バルドー、魔術師ながら脳筋の君が楽しみにするのは分かるけど、明らかに落ち込んでる二人の前ではしゃぎ続けるのはどうよ?」
「ちぇっ、んだよ、お前らだってなんかしら参加しなきゃならねーんだろ、腹くくれよ」
「「だってえ」」
見事に気弱な返事が重なった。
来月行われる合同演習とは、魔法学校と訓練所の間で数年に一度行われる魔術師と兵士の卵たちによる合同訓練のことである。今年は数がちょうど良いということで、魔法学校側から『原石』の三年目、訓練場側からは四年目の訓練兵たちが参加することになっている。
内容は、それぞれ前衛の訓練兵、後衛の魔術師でグループをつくり、トーナメントを行うというシンプルなものだ。この訓練で求められるのは強さもそうだが、なによりグループでの協調性、チームワークである。
「大体魔法が使えるオズくんや、戦闘脳のバルドくんならなんとかなるかもですけど、私たち攻撃には向かないですもん」
「ミリアさんはまだいいでしょ? 僕、照明魔法とかなら普通に出せるけど、攻撃魔法となるとてんでダメなんだもの……」
しかし、戦闘の素質はあまりないという二人は、この訓練に対して非常に後ろ向きであった。後方支援どころか、研究関係の素質を持つ身としては、どうして戦闘訓練などせねばならないのだというのが本音なのだ。
「まあ、もう名簿は送っちゃったっていうし、諦めようよ。工夫すればなんとかなるって」
「トーナメント前に、しっかり作戦立てて、焦らないようにするのがキモだよな! あ、そういやグループ分けってどうなってんだ?」
「あー、確か当日一斉にくじ引きかなんかじゃなかったっけ。クラスごとにさ。前衛五人の後衛五人だって」
オズとバルドがのんきに話を進める間も、レイルとミリアの肩は下がったままであった。