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図書塔の賢者さま  作者: 空色レンズ
第一章『入学に至るまで』
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(02) ~ 旅路の最中

 はてと男は考える。


(いろいろやったけれど、そういえばどこかの国に仕えるとかしたことないよなぁ。試しに、どっかの国に仕官でもしてみようかな?)


 布と襤褸ぼろとの中間ぐらいに痛んだ外套をまといながら、男は平原をぽてぽてと歩いていた。

 ちなみに、自分がどこへ向かっているか、地図も磁石も持っていないため欠片も把握していない。

 それでも、男は自分が絶対に行き倒れたりしないことを知っていた。というか、行き倒れるようなことがあるなら、それは確実に演技をしてのことだろうな、なんて考えていたり。

 歩いて、歩いて、日が昇り、沈み、月が昇り、沈み、空が晴れ、曇り、雨を降らせたりとさまざまに変化する中、ひたすら男は歩き続けた。そうして、ようやっと街道らしいものを発見した。


「おっと、なかなか大きそうな道と遭遇」


 小声で楽しそうに言って、男は少し軽やかな足取りで道を歩いて行く。

 途中、貧相な馬にひかれた荷馬車が後ろからやってきて、御者をしているこれまた貧相な男に話しかけられた。


「よう旅人さんや! 荷物もなしに、どうしたい?」

「細いわりに、威勢はいいなぁ。荷物はもともと持ってないの。てか、むしろ俺自分がどこへ向かってるかもろくにわかってないんだけど」


 男は軽い調子で答えて見せたが、彼の言葉を聞いた御者は、その目を大きく見開くと、やがて気の毒そうに男を見やった。彼は、男が盗賊か何かに襲われ、身ぐるみはがされた上記憶を失うほど乱暴を受けたのではなかろうかと。そのわりに足取りが元気なことが気がかりではあったが。


「旅人さんや、ここをまっすぐ行くとな、何本かの街道が合流してる地点があるのよ。その中でも一番大きな南街道を進むと、王都につながる大街道に出る。合流地点にゃいろいろと店が出てる。よけりゃ案内するがね?」

「あれ、おっちゃん優しいね。そう言ってくれるんなら、お言葉に甘えようかな」


 男は、ふふと笑ったようだった。頭まですっぽり覆い隠している外套の、肩の辺りが震えている。

 それをぱさりと取り払って、男は御者を振り返った。その顔を見た御者はまたしても仰天、うっかり手綱を引きかけてしまった。それはもう……話に聞く、天上に住まうもののように整った顔であったから。

 癖の強い、つややかな黒髪に、きらきらと輝く金色の瞳。肌はそこらで噂になる美人などとは比べものにならないほど美しく、白かった。


「俺はオズ。ねえおっちゃん、ちょうどヒマしてたんだ。よかったら話し相手になってくれない?」

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