(14) ~ 無事、合格
試験終了から三日後。試験結果を記した書簡が、ティストンの家へ届けられた。
オズは自分以上に緊張しているらしい一家の顔を、笑いをこらえながら見つつ、ぱらりと書簡を開く。
そこに書かれているのは、『合格』と『入学許可』の文字。
「合格みたい」
ひっくり返してティストン達に見せたところで、歓声を上げたアルフとルリカに飛びつかれた。慌てて合格証書を空中へ逃がし、二人を抱き留める。
「オズ、おめでとう!! お祝いだね!」
「おいわいっ!」
「……ありがと、二人とも。ティストンさんもリリカさんも、ありがとうございました」
今まで世話になった分も含めて、オズが頭を下げると、リリカはぶんぶんとおおげさなほどに手を振って笑顔を浮かべた。
「オズ君自身が頑張ったからよ! おめでとう、しっかりね!」
「おめでとう、さあ、このあとからが大変だよ。いろんな準備をしなくちゃね」
ティストンは穏やかな表情でそう言うと、席を立ちやるべきことをノートに書き連ねていく。
「杖は、一年生の間は初心者用のを使い続けるからいいとして、教科書と実験器具一式だね。入学金、は心配ないから、寮の手続きもしておかなくちゃ」
「あれ、オズ、ここから通うんじゃないの?」
アルフが首を傾げる。それを真似てリリカも首を横に傾けるのを見て、オズが吹き出しながら答える。
「ふふっ、魔法学校の生徒になったらね、他の生徒と共同生活しなくちゃならないらしいよ。だから、入学したら俺は学校の中にある建物に住むんだ」
ここにはしばらく来られないと答えると、とたんに理解したルリカが涙目になって抗議する。
「やっ! オズ、行っちゃ、や!」
「や、って言われてもなあ」
「ルリカ、オズにお祝い、してあげないのかい?」
「ううっ」
おめでとーと鼻声で言うルリカを撫でながら、オズは笑う。ほんの少しの時間しかいなかったけれど、ほとんど素性の知れない自分がいる分には、ここはあまりにも居心地が良すぎた。
「お休みになったら、ティストンさんと一緒にまたお邪魔するよ。それまでいい子にしててね」
「わかったー」
「わかった……」
ルリカほどの反応は見せないにしても、オズがいなくなるということで落ち込んだ様子になったアルフだったが、オズは彼の頭を軽くこづいてやる。
「お前はもう少ししたら、魔法学校に来るつもりなんだろ? そうしたらいつでも会えるじゃないか」
「あっ、にい、ずるい!」
「はは、ほら、お前達母さんのごちそうが冷めるぞー」
とたんに勃発しかけた兄妹けんかを、絶妙なタイミングで中断させる。ティストンはばたばたと食卓に着く子供達を見て、柔らかな笑みを浮かべた。
「それじゃあ、オズの合格を祝って」
「おいわい!」
「おめでとうね、オズ。また、いつでも遊びに来てね」
近づけられた果実酒入りのグラスが、チリンと音を立てた。
これにて、『入学に至るまで』はおしまいです。
次のお話から、少し時間が飛びます。そして、序盤に名前が出てきた村人のおっちゃんと門番さんですが、今後あまり話に絡むことはないような、気がします(汗
学校生活もけっこう飛び飛びで行きますので、よろしくお願いします!