運命なのだろうか?
高級住宅街と呼ばれるその地域に茅ヶ崎家はあった。クリーム色の外観に深い青の屋根。おしゃれなその家は1度は住んでみたい、と憧れるものだった。
そんな家の2階にある広々としたキッチンでは深緑のワンピースに猫のイラストのエプロンという出で立ちの遊が手作りであろうクッキーやマフィン、ドーナツにケーキとさまざまお菓子に囲まれていた。本人はそんなものは気にしないとでも言うようにチョコレートを湯煎にかけていた。
「えーっと、生クリーム入れたから…」
手元にレシピはない。作りなれているがゆえにできることだ。それをホイップようの袋にいれてしぼって冷蔵庫にいれる。
「よしっ!次は何作ろうかなー」
そういったときだった。
〜♪
「お客さん…?」
恐る恐るインターホンのカメラを見るとそこにいたのは…
「えっ!?憬都に澪に玲くん、雅幸くん、啓良くんまで?」
「もしもし?悠、どういうことなの?」
大急ぎで玄関のロックを外し5人を3階にある悠と遊の共用の部屋に案内したあと困り果てた声で遊は電話をかけた。
「は?どういうことって何が?」
対する悠は遊の言っていることの意味がさっぱりわからない。
「えっ?悠、聞いてないの?というか、今どこにいるの?」
「今?みんなと別れたあと本屋に来てるんだけど…」
遊の声や内容になにかあったことを推測して悠は慎重になって答えた。
「あのね、さっき家に憬都と澪と玲くんと雅幸くんと啓良くんがきて、今あたしたちの共用ルームに居るんだけど…」
遊の言葉に耳を疑い、たっぷりと数秒おいてから悠は1度目を閉じて深呼吸をした。
「すぐに帰る。」
心なしか低く聞こえた声でそれだけ言うと電話は一方的に切られてしまっていた。
とりあえず、と悠が帰ってくる前に2階のキッチンでお茶の用意をしていると階段を降りてくる音に振り返った。
「憬都、どうかしたの?」
振り返った先にいたのは憬都だった。
「1人じゃ大変だろ?手伝う。」
そういって憬都は遊のほうへ歩いてきた。
「え、大丈夫だよ。憬都はお客さんなんだからみんなと待ってていいのに…」
そうは言っても憬都に戻る気配はなく、遊はお皿の用意を頼んだ。
「にしても、悪いな急に来て。」
憬都の困ったような顔に何かを察した遊は困ったように笑って首をふった。
「悠、怒るかな?」
「だなぁ、きっと矛先は俺に向くんだろうな。」
その様子は簡単に想像できた。
「あ、」
部屋にお茶を持って行く途中、ふっとさっき作っていたお菓子の存在を思い出した遊は冷蔵庫を開きクッキーとマフィンを取り出した。
「お待たせーって、悠!?」
そこに広がっていたのは仁王立ちの悠の前に正座する澪と1年生3人だった。
「あぁ、遊ただいま。…憬都はこっち。」
はぁ、とため息をつきつつも憬都は言われた通り正座する。
「ごめんなさい。遊がいなくて悠が苛立ってたので来ちゃえって思ってそのまま来ちゃいました。出来心です。」
澪の棒読みのセリフに悠の表情はぴくぴくとしたものの諦めたかのように大きくため息をついた。
「はぁ、もういいよ。遊も暇なら来ればよかったのに、澪だって来たんだから。」
そう言われて遊はちょっと驚いたあとにっこり笑った。
翌日。
「昨日のお菓子の残りもってきたんだけどいる?」
学校の屋上には昨日の7人の姿があったのだった。
ここで1章終了です!
続いて閑話を入れた後に2章に続く予定です。
よろしくお願いします(o^^o)♪