またね
卒業ー。
「卒業式、終わっちゃったね。」
最後の記念に、と外で写真を撮ったり話したりしている同級生たちを窓の外に見ながら4人の人影が教室にあった。その横顔はまだ幼さを少し感じさせるものの中学に入学してきた頃と比べると確実に大人に近づいていた。
「いろいろあったな。」
でかでかと'祝 卒業!'と書かれた黒板に目を向けた。その周りには思い思いの寄せ書きがあり自然と3年間を思い起こさせた。
「この制服でここにいられるのも今が最後か...。」
自分の来ている制服を少し寂しそうに見ながらそう言った。真新しく着ているより着られるいる感じのしていた制服もすっかり馴染み明日からそれを着ることがなくなることが不思議に思えた。
「また、新しいことが始まるね。」
目に光を灯しお互いを見た。
「澪は合唱だよね。」
「うん、今度は最初からがんばるよ。」
3年生のコンクールで再びアルトパートのソロを勝ち取り県大会を突破し支部大会で銀賞をおさめた澪には合唱で推薦がいくつかきた。そのなかで全国でも強豪と言われる学校の推薦を受け、すでに何度か練習に参加している。
「憬都も...。チームは変わるけどサッカー頑張れよ。」
「あぁ。」
夏の大会で県のトレセンに悠とともに選ばれた憬都はその後、声をかけられたJ1チームのユースのセレクションに合格し高校に通いながらクラブチームでサッカーを続けることになった。
「悠と遊は聚侑か。」
「素直に行くとは思わなかったよ。」
そう言われて2人はちょっと面白くなさそうな顔をした。2人とも夏休みに高校見学に行くと志願先をあっさりと聚侑学苑高校にしてしまったのだ。
聚侑は茅ヶ崎の暗黙の了解になっているだけあり単純に学力レベルが高いだけでなくカリキュラムや設備、教師、部活もかなりのものだった。
「やりたいこと全部やれるからさ。それに、これは人に言われて選んだんじゃなくて自分の意志で選んだから。それが一致したのは仕方ない。」
悠は堂々と言い放った。
「あたしもそれもあるし、お兄ちゃんが行くためにあれだけ頑張ってた学校だから。お兄ちゃんの代わりに楽しもうと思って。」
にっこりと遊が言った。
「サッカー部は3人が引っ張ってってくれるから心配ないし。」
サッカー部は啓良がキャプテン、雅幸が副キャプテン、玲がエースとして引き継ぎ、秋の新人戦から上々の成績をおさめている。
「コーラスも大丈夫でしょ。」
コンクールの練習のなかで遊や澪から技を吸収していった、頼もしい後輩たちがいる。
「思い出もちゃんと持った。」
携帯にはたくさんの写真も後輩たちからもらった寄せ書きの書かれた色紙もある。
「行くか。」
校門を4人で通り抜けた。
「じゃあ、またね。」
運命に翻弄されていた子供たちは今、大人になるために次の一歩を踏み出したばかりーーー
長い間、ありがとうございました。
拙い文章に最後までお付き合いいただいたこと本当に感謝です。
わたしもまだまだ子供でいつまで経っても大人になれないような気さえするのですがこの子達のように一歩一歩、大切に進んで行けるように頑張っていこうかなと思います。
次のお話でもお会い出来ることを期待して。
本当にありがとうございました!!!