幸せの足音
「おめでとー!」
「まぁ、俺らが気ィきかせたんだからちゃんとしてもらわねぇと困るけどな。」
待ち合わせ場所に行くとすでに悠と澪は着いていて手をつないで歩いてきた2人を見てそう言い放った。
遊は赤面していたが憬都はいたって飄々としていた。
「よかったね!遊」
最後にと入った喫茶店で澪は遊に言った。遊も照れながらも嬉しそうにうなずいた。
「憬都のこと、よろしくね?」
澪のその言葉にやっぱり幼なじみって特別なんだろうな、と思う。友達のようで少し違う、恋愛でもない...。家族のようなものなのかもしれない。
「憬都が望んでくれる限り大丈夫だよ。」
遊はやわらかく笑った。
「でも、悠はさみしいかな?」
いたずらっ子のように遊が笑うと澪も苦笑いを返した。
「まぁ、悠のことは任せといてよ。」
「ったく、あんまりヒヤヒヤさせんなよな。」
遊と澪を席に残し注文をしに来た悠はそう憬都に言った。
「そのことは感謝してる、ありがとう。」
素直にお礼を言うと少し面白くなさそうな顔をしながらも照れたように別に、と言った。
「これで憬都は俺の弟だな。」
意地悪そうに笑うと憬都は少し嫌そうな顔でそれを見た。
「遊のためだ、諦める。」
「その調子で頼んだぞ。」
悠の言葉は一見茶化しているようにも聞こえたが目は本気だった。憬都もそれにしっかりとうなずいた。
「ん?」
注文したものを持ってテーブルに向かうとそこにいた2人は騒がしく座っていた。
「どうしたんだよ?」
こちらに背を向けるように座っていた遊に悠が声をかけると遊はびくりと顔を強ばらせ悠をまじまじと見た。そして、ゴクリと唾を飲み込むと意を決したように重い口を開いた。
「悠って澪とつ、付き合ってたの!?」
「あぁ、そのことか。」
さらりと言った悠と驚きに目を丸くする遊、いたずらに成功した子供のように笑う澪に同じく知らなかったのか絶句する憬都。
「ちなみに1年生のときから付き合ってるよー」
澪の言葉で今度は目を丸くしたままそちらに顔を向けた遊はしばらく目をつぶると口を開く。
「言ってくれてもよかったのにー!」
とにかく、落ち着きを取り戻し喫茶店をあとにすると先を歩く悠と澪を見ながら憬都と遊は歩いていた。
「2人にはやられたな。」
「本当に...」
2人でため息をこぼすとどちらともなく笑い出した。
「まぁ、隠してたっていうより聞かれなかったから言わなかっただけみたいだし許してやるか。」
「そうだね、それに...」
遊はにっこりと笑って憬都を見た。
「憬都と今こうやって歩けるのも2人のおかげだもんね。」
京都から戻ってきた4人の携帯には悠と澪にはオレンジの憬都と遊には淡い緑の同じデザインのキーホルダーがゆれていた。