続かないから
「なぁ、憬都」
ずっと走りツヅケテイタ悠が急に止まった。
「どうした?」
憬都はそこで初めて遊が叔母と会って居なくなった、ということを知った。理由は分からなかったが多分、今聞くことではないと判断しただうなずいた。
「心当たり、2ヶ所あるんだ。」
おもむろに悠がいう。その場所は丁度立ち止まった場所から逆方向。
「憬都、そっち行ってくれるか?」
「あぁ。」
憬都はしっかりとうなずいた。
「あと、澪に電話してうちで待っててくれるように言っておいてもらえるか?」
「わかった。早く行けよ、俺も急ぐ。」
1度顔を見合わせてるとそれぞれの方向に歩み出した。
__________________......
それから1週間後。
晶一は自殺した。
遺書には『受験に失敗してごめんなさい』と書かれていたらしい。
「生きててくれれば、それだけで良かったのに...」
真新しい聖蘭学館の制服に身を包み、学校へと続く道を1人歩きながら遊はつぶやいた。
晶一が死んで、ズレていた歯車はズレという言葉ではあらわせないほどに狂った。いや、正確には滋乃が狂ったのだ。それまでは無関心という感じで遊に接していたのが今では目に見えてキツくなった。
成績がいいのは当たり前。でも褒めるでもなんでもなく忌々しいというような顔をする。合唱で1年生ながらにコンクールのメインメンバーに選ばれても同じような対応。
しかし、それでいて遊のことを見ていない。
それがどうしようもなく辛かった。
「1回でもいい。あたしのこと見てもらえるようにがるばろう。」
毎日、それだけを目標にして勉強も部活も生徒会活動もがんばった。もちろん、家では家事も手伝った。
それでも、見てくれる日は訪れなかった。
そんなある日。
「ねぇ、遊。」
いつものように夕食の用意をしていた遊のもとに滋乃が現れた。
滋乃は晶一が死んでからは部屋にこもりっぱなしでほとんど出てくることはなかった。それが珍しく出てきたうえに名前を呼んでくれた。
遊は期待していたのだ、自分を見てくれるかもしれない、と。
それは、最悪な形で叶えられたのだった。
「アンタは毎日毎日、家事して勉強して部活して生徒会までやって...。そんなに自分が優秀だって見せつけたいの?アンタがいなければ晶一は死ななかったのよ。そうよ、アンタのせいで晶一は死んだのよ。」
憎しみと憎悪の目は真っ直ぐに遊を捉えていた。
「アンタが死ねば良かったのに...。アンタなんか、本当の娘でもないくせに!!!」
そう言って滋乃が殴りかかってきた瞬間、扉が開き寿貴と柊麻が飛び出してきた。
そこからのことは覚えていない。
気づいたら遊は病院のベットの上にいた。
「おはよう、ゆうちゃん。気分は大丈夫?」
そこに居たのは紅葉。つまり悠の母だった。
よく見ると周りには悠と柊麻もいて心配そうに遊を見つめていた。
「ん...。ママは?」
その言葉に3人が凍りついた。そして、堰を切ったように紅葉の目から涙が溢れた。
「ごめんなさい、ごめんね...」
「遊ちゃん。いや、遊。本当のことを聞くか?」
柊麻が真剣な目で訪ねた。
「本当のこと...。知りたい、教えて?」