永遠には
「えっ?遊が...。どういうこと?まだ帰ってないとかじゃなくて?」
文化祭の帰り道、いつの間にか遊も悠、憬都も1年生3人もいなくなって1人で帰路につこうとしていた澪の携帯に電話が入った。
「じゃあ、家の前でお父さんのお姉さんにあってそのまま走ってっちゃったってこと?」
なぜおばさんに会って逃げる理由が理由があるのか、そしてそのことでなぜここまで心配されるのか、澪にはわからない。でも、電話口の憬都の声は逼迫していた。
「とりあえず、遊の家...!」
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「合格おめでとう、遊。」
12月。聖蘭学館の合格発表を遊は晶一と2人で見に来ていた。もっとも晶一はわざわざ来たというわけではなく冬の課外授業のついでなのだが...。
「ありがとう!お兄ちゃん」
優しく遊の頭をなでる晶一にはにかんだ。
「じゃあ、書類もらいに行こうか。」
「え...?主席合格ですか...!?」
書類をもらいに行くと他の人のように普通にもらって終わりの予定がなぜか先生に連れていかれ応接室でそう言われた遊は素っ頓狂な声をあげた。
「えぇ。だから、もしここの学校に入学してくれるならぜひ新入生代表あいさつをお願いしたいと思って。」
そういってニコニコと微笑んだ。
「すごいな、遊は。がんばれよ?」
「うん!」
そのとき、晶一に見えた辛い顔に少しでも気づけていたら...
それから、晶一の受験勉強はさらに過酷になっていった。もともと多かった塾や家庭教師の時間はさらに増え、家でも常に部屋にこもって勉強。
「晶一、この間の模試どうだったの?」
ここのところ忙しく、なかなか家に帰っていなかった滋乃が久々に帰ってきて遊とともに夕食を食べていた晶一におもむろにそう口を開いた。
滋乃のデザイナーとしての仕事はここのところあまり仕事がうまくいっていないようだった。なんでも悠の母である紅葉の立ち上げたブランドが成功し滋乃のブランドの売れ行きの落ちているらしい。
「あぁ、この間やっとB判定に上がったんだ!」
晶一は久しぶりに笑顔を見せた。
「B判定...。そう、この時期でB判定...。」
それだけいって部屋から出ていってしまった。
晶一はそれに対して表情を曇らせてごちそうさま、といって部屋に戻ってしまった。
そして、最悪の結末へのカウントダウンは始まってしまった。
「え、お兄ちゃんダメだったの...?」
あれだけ頑張ってたのに...?
遊は寿貴の言葉を信じられなかった。
「わかった、普通がいいんだよね?」
電話を切って家に戻ると家には誰もいなかった。
晶一もいっしょに発表を見に行った滋乃もまだ帰っていないようだった。
部屋に戻ってしばらくして2人が帰ってきた気配はしたもののなんの声をかけることもできなかった。