揺らがない事実〜文化祭の裏側〜
「振られてきたよ。」
後夜祭のダンスパーティの会場とは少し離れた本館にある空き教室。真っ暗の教室の入口で月明かりに照らされた啓良が中にいる2人に声をかけた。
「お疲れ。」
そう言って啓良に手をふって苦笑いしたのは玲。そしてその隣にいた雅幸は静かに啓良を見た。
「さて、約束通り待っててやったぞ?せっかくの文化祭なのに」
ふざけたように玲がいうが目は真剣。なんだかんだで啓良を心配しているのだった。
「けど、わざわざ振られるような告白でよかったのか?」
ここにきて雅幸が初めて口を開いた。
「ん、まぁ。先輩たちがお似合いで入る隙間ないのはわかってたし。それに、すっきりしたから...」
好きになる前からわかってた。遊が憬都を見ていて憬都が遊を見ていること。そしてそれに憧れてた自分に。でも、その憧れに違う感情が混ざってきて自分じゃどうにもできなくて...。
「どっちかっていうと先輩が好きよりは先輩たち(..)に憧れてたのかもしれない。」
啓良はそうして窓の外を見た。
「遊センパイ、早く幸せになってくれるといいな。」
玲がそうつぶやいた。
「そしたら、俺らもいい相手見つけてセンパイたちに紹介して、姉貴よりは先に見つけないとなー」
玲の言葉に啓良からも笑いがこぼれた。
「そうだな。...でも、今日だけは、」
「いいんじゃねーの?泣いても。そのために俺らがいるんだろ?」
啓良がいい終わらないうちに雅幸が重ねた。
「泣かねーよ!!!」
啓良の目には涙が滲み慌てて上を向く。
玲も雅幸も何も言わなかった。
この思いとは今日でさよなら。
次に会うときは笑顔で後輩として。