まるで運命の
文化祭の話し合いをするのはなにも部活だけではなかった。
「なかなか決まらないね...。」
席替えによりどんなわざを使ったのやら、悠と遊と憬都と澪は見事に窓側の後ろ4席を陣取っていた。窓側の1番後ろが憬都、その隣が遊、憬都の前に悠、その隣に澪という並び。
「そうだね。」
遊のつぶやきに返答をしたのは悠だった。しかし、悠の顔は興味なさげで目線は窓の外に向いている。
遊が黒板に目を向けるとそこにはお化け屋敷や喫茶店といったメジャーなものからコスプレ写真館や神社といったマイナーなものまで様々だった。
「うそ、同票...」
話がまとまらず最終的にとった多数決は喫茶店とコスプレ写真館が同票。時間もそれほど残ってはおらず学級委員は途方にくれた。
「どっちもやりたいならどっちもやればいいのに...。」
不意に遊がつぶやく。澪はどういうこと?と聞き返した。
「コスプレして喫茶店やって記念にいっしょに写真とるとか...?」
少し考えたのち遊がそういった。
「なるほど!!それいいね!!!」
「澪っ!声大きい...」
時、既に遅くクラス中の視線は2人に注がれていた。
「コスプレ喫茶って、漫画かよ...」
黒板にでかでかと書かれた文字を見て憬都が言った。悠はどこか呆れたようにそれを見ているし遊は目を逸らして違う次元を見ているようだった。唯一、澪だけが楽しそうと顔を輝かせている。
「しかも、係は全部くじ引きだろ?俺、裏方がいいんだけど...」
衣装や役割は特例を除きすべてくじ引きで決める、というのだ。仕事はホールでの給仕兼衣装係、キッチンでの料理兼メニュー考案係、そして当日の材料の運搬兼場所の装飾係の3つ。
悠は大きくため息をついた。
そして2日後。
「さて、と。それではキッチン班のみなさん、お願いします。」
放課後の教室には男女合わせて16人ほどのメンバーが集まっていた。そのなかには遊と憬都の姿も...。悠と澪は悠の希望の裏方班、ではなくホール班。コスプレをすることは決定だ。最後までゴネてはいたものの最終的には渋々と班の集まりに行ったので大丈夫だろう。やるとなったら悠はとことんやるはずだ。
「で、メニュー決めるんだけど...。」
先程から進行をしているキッチン班になったクラス委員の目が泳いだ。
「誰か料理出来る人いる?わたし料理できないのよねー」
そういって笑い出した。
「う...」
憬都はじっと遊を見ている。遊も他の班員もそれに気がつかないほど疎くはなかった。
「あたし、得意なほうです...。」
こうした流れにより遊はメニュー考案担当の中心役になったのであった。