必然の流れである
夕方になりキャンプファイヤーは始まった。メインとなっている特設ステージでは実行委員を中心にイベントが行われていた。
「にしても疲れたねー」
足を捻挫している遊は先生の配慮によりイスを用意してもらっていた。そのとなりには澪がいて2人で遠目にステージを眺めていた。
「うん、疲れたかも...。まさか落ちるとはねぇ。」
苦笑い、といった様子で遊が返した。
「あ、ビンゴ始まるみたい。」
ステージに目を向けると先ほどまでの有志による音楽ステージが終わり、ビンゴの用意が始まっていた。ステージ付近ではビンゴカードも配られていた。
「遊、澪。」
そこに来たのは悠と憬都。2人の手には2枚ずつビンゴカードが握られていた。それを悠が澪に憬都が遊に手渡した。
「あ、、、」
ビンゴゲームが始まりしばらくしたときだった。不意に憬都がつぶやいた。
「どうかした?」
悠が憬都のカードを覗き込むとそのカードは斜めが1列空いていた。
「はやっ!ビンゴじゃん!!!3人目だよっ!!!ビンゴでましたー!!!」
そのままの勢いで澪が叫んだ。するとすかさず実行委員の人が来て憬都を連れていった。
「すごいねー!」
遊もニコニコしながらステージに連れられる憬都を見ていた。もっとも憬都は嬉しくもなさそうだったが...。
「はぁ、これどうしろっていうんだよ...。」
戻ってきた憬都が持っらってきたのはA4サイズのすこし大きめな紙袋。なかを覗くとお菓子やスポーツタオルや文房具などが適当に、本当に適当に入れてあった。
「どうしろっていいじゃん!!!あ、いちご味入ってるー!」
どうやら澪の好きなメーカーのいちご味のチョコらしく欲しい欲しいと目が訴えていた。
「やるよ。これだろ?」
憬都がチョコを渡すとわーい、と澪は1人食べ始めてしまった。
「あと、悠。」
そう言って悠に本の栞を渡した。鉄製のもので紐の先には鷹のチャームがついていた。
「サンキュ。」
おそらく憬都も悠が読書好きなのを知っていたのだろう。
「あたし、花火やってくる。」
「おいっ!!!」
遊はそのまま3人を置いて花火をしている区画に足を引きずりながら歩いていった。
「あーあ、今日は何してるんだろう?」
線香花火を持って広場の端の方で1人座り込む。楽しいイベントのはずなのに変な行動をしてばかりだ。
「おい。」
その声に斜め上を向くといたのはやはり憬都だった。
そしてそのあとなにも言わずにとなりに座り込むと不意に何かを差し出した。
「えっ?」
「やる。」
それは水色の大きめのヘアピンだった。そのこには蝶の装飾がついていた。
「俺持ってても仕方ないし、なんか遊のイメージにあってるし。」
そう言って憬都も線香花火を始めてしまった。
そして、2人の間には静かながらも心地よい空気が流れた。
翌日。
「おはよー。あれ?ピン可愛いね!」
澪に会ってそれを言われて遊はにっこりと笑顔になった。
「ありがとう。」
それから、作品として4つの写真立てを作りまたいつもの日常に戻っていった。