そこに何かを
「本当に、ここなの...?」
スタンプを残り1つにし、4人が目の前にしたのは木々に覆われた細い坂道だった。
何度も確認するがやっぱりこの道しかありえなく残りのスタンプを押して行くにはここしかないようだった。
「スタンプは時間までにいくつ集められるか、が問題だから全部集める必要はないからな...」
憬都の言うように恐らく、この難所にあるスタンプを集める班が出ることは予定外だったのだろう。
「それでも、行ったほうがいいよね...」
時間まであと半刻ほど。地図を見る限りでは集合場所に行くのにはスタンプを通るルートが距離的には1番近い。そう、だから遊のいうように行くしかないのだ。
「まぁ、どうにかなるでしょ。」
「そうだよ、楽しもっ!!!」
相変わらず余裕の悠と楽しそうな澪に2人は顔を見合わせて苦笑した。
「なんか、気味悪い...」
5分ほど歩いたところで遊がポツリと言った。確かにまわりは薄暗くなにかが出てきそうな雰囲気があった。
「幽霊とかいたりして。」
先を歩いていた悠が意地悪そうな笑みを浮かべて言った。一瞬、遊の顔が怖ばる。
「冗談だよ。」
そう言ってまた前を向いて歩きだした。
「幽霊、って。」
下を向いてつぶやく。ホラー系はあまり得意ではない。正確には夜の学校やいわくつきのものは苦手だった。ホラー映画やホラー小説は平気なのだが...。
そう、だからなんとなく警戒していた。そして、道の端でひたすら歩くことに集中していた。
トントン
「...っ!!!」
あまりの驚きに声すらでなかった。そして、、、
ガサッ
「えっ?」
一瞬の浮遊感。
「おいっ!!!」
そのまま、遊と助けようとした憬都は3mほど下に落ちた。
「遊!憬都!!!」
前を歩いていた悠が慌てて叫ぶ。澪は真っ青だ。
「痛ってぇ...」
「うぅ...」
落ちた2人は、とりあえず無事だった。
「大丈夫か?」
「とりあえずは。」
「あたしも平気だよ。」
2人が動いたことで少し冷静さを取り戻した悠の問いかけに答えた。
「登れる?」
悠のその問いかけに2人はそろって苦笑した。
「ごめん、無理かも。足ひねったみたい...」
「悪ぃ。俺も手首が...」
落ちた拍子に遊は右足を憬都は左手首をひねったようだった。
「ごめんなさい、私が調子にのったから...」
澪が今にも泣きそうな声で言った。
「大丈夫だよ。あたしが驚きすぎただけだもん。」
「2人で待ってるから先生呼んできてくれるか?」
2人とも本当に澪のせいとは思っておらずさっぱりと言った。
「了解。行くよ、澪。」
「あ、え、うん。」
「ごめんね、巻き込んじゃって。手首大丈夫?」
「平気。巻き込まれたっていうか自分から巻き込まれにいったっていうほうが正しいし。」
そう言って憬都は遊の足に目を落とした。
「悪いな、澪が驚かせたせいで。」
その言葉に遊はなんとなく不機嫌になる。
「どうして憬都が謝るの?」
その言葉は予想外だったのか憬都は目を点にした。
今までは澪がなにかしたら謝るのは憬都の役目だった。そしてなんでなんて聞かれたことはなかった。
「幼馴染みだから、家族と同じっていうか...」
ー遊も悠の代わりに謝るとかなかった?
その憬都の言葉に釈然しない遊はいつもの笑みを崩した。しかし、それから無理矢理その言葉を受け入れたかのような複雑な表情。
「変なこと聞いてごめんね。」
「いや、、、」
助けがくるまであと20分ほど。
気まずい空気が流れた。