身をゆだね
「5個目っと。」
澪の押したスタンプカードには10個のうち5個のスタンプが押されていた。
「あと半分、時間も十分だね。」
時計に目を向けた悠が言った。周りは見渡す限り木で他の班の姿はなかった。それもそのはず、チェックポイントはどれも見つけにくいところにばかり設置されていたのだ。地図があるとはいっても森のなかではどこを歩いているのか見失ってしまいそうになる。
「じゃあ、次行くか。」
それなのに遊たちが順調に進めているのは悠の地図の読解力と憬都の方向感覚のよさ、そして澪の社交性のおかげかもしれない。
「次は向こう?」
地図を見ていう悠。
「いや、向こうが南だから...」
と言い出す憬都。
「さっきこっちって聞いたけどー」
と言う澪。
「あー、ストップ。えっと...」
でも結局、意見をまとめているのは遊なので遊がいなければ意味はないのだが。能力的には悠でもできる役目だが悠もこのメンバーなのでまとめるということは放棄気味なのだ。
こうして午前のうちに半分のスタンプを集め、4人は休憩を兼ねてお昼ごはんにすることにした。
「わー、綺麗...」
お昼ごはんは学校で注文した業者の弁当。しかし注文したところは有名な和食店、フレンチ、中華のなかから好きなところのもの。それぞれ2種類ずつで好きなものを各自選んでいる。
遊と悠はフレンチ、憬都は和食、澪は中華。それぞれが綺麗なお弁当だった。
「美味しー。」
「うん、まぁまぁだね。」
素直に美味しいと言ったのは澪でまぁまぁと言いつつ満足そうなのは悠だった。
「確かに美味しい!憬都のは?」
「あぁ、うまいよ。」
遊と憬都も満足の味だったようだ。
「あ、みんなも少し食べる?」
「いいの?じゃあこれもいいよ!」
そう言い出したのは女子2人。男子2人も少々戸惑いつつも渡されたものを受け取った。
「悠、これ1個ちょうだい?」
隣にいた悠に澪が言うと仕方ない、と言いつつ悠はそれを澪に渡した。なんとなくいいなぁ、というふうな目のまま視線を悠たちから憬都に向けた。
「ほら。」
そうして憬都は遊にデザートの小さめの綺麗な和菓子を差し出した。
一瞬ぽかんとしたあと、にっこり笑った。
「さって!お昼ごはんも食べたし次行こー!!!」
ゆっくり食事をして食休みもしたあと澪を中心に4人は立ち上がった。
「次は、こっちにするか。」
そうして4人はさらに奥へと歩き出した。