面白いのかもしれない
そして、4人がテントに戻ったときそこではクラスメイトたちが困惑した様子で話し合っていた。
「どうかしたのか?」
憬都が近くにいたクラスメイトに聞くと実は…と返ってきた答え。
「リレーに出る予定だった女子2人が捻挫と打撲で出られなくなったらしい。」
「えっと、とにかく急いで代役立てるしかないみたいなんだけど…」
体育祭委員の子がそういうがみんなどうしていいかわからずまわりに目を向けるだけで何も進まない。補欠を前もって決めておけばよかったのだがそこまで頭がまわっていなかった。
「澪。」
憬都が不意に言う。そして澪はしばらく憬都を見たあと諦めたように目をつぶる。
「1人は私がでる。」
澪が言った。
「澪って速いの?」
遊はとなりにいた悠に尋ねた。
「速いよ、もともと出る予定だった女子と同等かそれ以上に。短距離だけなら。」
ただし、澪は運動が嫌いで基本的に体育などは手を抜いているらしい。でもさすがにリレーで手を抜くことはないだろう。
「あと1人はどうする?アンカーの1個前なんだけど…」
アンカーの男子とその前の女子は距離が2倍、男子なら400mで女子なら200mを走らなくてはいけないのだ。
「あぁ、それなら遊が走るから大丈夫。」
そういったのは悠だった。
「えっ!あたし!?えっと…」
遊は慌ててまわりを見渡す。しかし周囲の反応は悠の双子ならきっと早いだろう、という空気が流れ始めていた。
「澪…。」
「遊…。」
2人は予定外の事態にため息をついた。
「憬都がアンカーだったんだね。」
トラックの内側に並んでいる遊が言った。トラックは200mのため憬都と遊は前後に並んで座っている。スタートラインでは澪がスタートの準備をしていた。表情は何と言うか...だるそうだった。
パンッ
乾いた音が鳴り響き4人の女子が一斉に走り出した。第一走者だけあってみんな速い。
「澪、すごい。」
澪の走りは流れるようで無駄がなかった。そして陸上部の走る緑に続き2位でバトンは悠に渡った。
「さすがだな。」
憬都がそういったのと悠がトップに出たのは同時だった。悠はバトンパスから勢いそのままにどんどん前へとすすんでいったのだ。
そして青と緑のデッドヒートでリレーはすすんだ。
「もう少し…。」
第七走者。第九走者の遊は 走る様子を見ながらそうつぶやく。
「あ!!」
そのときだった。青のバトンが落ちたのは。第八走者に渡ろうとしていたバトンは地面に落ちカランと音をたてた。そこで青は一気に最下位まで落ちた。
「嘘、頑張ってたのに…。」
遊はそう言った。
「まだあきらめるなよ。まだ俺たちがいる。どうにかなるから。遊は遊なりに全力で走ってこい。」
ーあとは俺がどうにかするから。
憬都はそうハッキリと言った。
一瞬目を見開いたもののそのあと遊は嬉しそうに顔をほころばせるとうん!と言ってレーンに行った。
「大丈夫、行ける。」
最下位で渡ってきたバトンをしっかり受け取ると遊は前だけを見て勢い良く走り出した。まずとらえたのは3位の黄。
「よしっ。」
それをいとも簡単に抜いてみせる。そして赤も抜き、あとは緑。しかし緑との差は広かった。
「っ。」
距離は本当に少しずつしか縮まらない。それでも懸命に走る。緑のバトンがアンカーに渡った。
「遊っ!!!」
そう叫ぶ憬都にバトンが渡った。
「はぁはぁ、憬都…」
息を切らせつつ遊は憬都を見る。緑のアンカーはまたも陸上部。しかし距離はわずかながらに縮まっている。そしてラスト50m。
「憬都ーーー!!!」
遊が叫ぶのを聞くと憬都は最後にスピードをあげた。
「ゴール!」
先にゴールしたのは青、憬都だった。
「お疲れ。」
体育祭が終わり4人は部室で休憩をしていた。
「本当にお疲れさま!優勝の立役者のお2人さん。」
澪はニコニコと遊と憬都に行った。
「そんな、憬都のおかげたよ。」
「遊のおかげだろ。」
そういった2人は顔を見合わせて笑った。
「楽しかったね。」
「あぁ。」
こうして4人の体育祭は幕を閉じたのだった。