必然であり
「澪…?」
遊が話しかけるが返答はなかった。しかし、しばらくして気を取り直したのかとりあえずと先輩に使っていいと言われた空き教室へと言った。
そういえば、澪ってコーラスだったんだね、と今さらながらに言う遊にまだ硬い表情のままうなずいた澪はCDをセットしながら遊に問い掛けた。
「遊はこの曲知ってる?」
うん、とうなずく。ソプラノとアルトの2重ソロという不思議な旋律の曲は今、さまざまな店やテレビ番組で流れている有名なもの。
「パート割りどうする?ちなみにあたしはソプラノやってたんだけど…」
「私はアルトだよ。」
ちょうどいいとパートを決め1度CDを聞くことにした。
CDを聞く澪の顔はこわばっていた。曲は明るくノリの良いものでソプラノとアルトのハモリから徐々に追いかけっこのようになりサビではどちらが主旋律なのかわからないどことなく似ているメロディの掛け合い。
2番に入るころ、遊は不意に歌い始めた。最初はつぶやくように、だんだんとしっかりと…。
「うそ…」
となりで澪は信じられないものを見るように遊を見ていた。そう、遊の声は澪が先日聴いた、一緒に歌いたいと思った声だったから…。
「ごめんね、歌いだしちゃって。」
謝る遊にぜんぜん、と首を振り澪はいつもより楽しそうに笑っていた。
「じゃ、合わせようか!」
そして、全体練習で2人の歌は大絶賛だった。
体育祭ー。
予定通りに晴れた今日、体育祭は行われていた。先ほどの2年男子の騎馬戦では大将の悠が大活躍していた。
「お疲れさま!悠も憬都も。」
テントに戻った悠と憬都を迎えたのは遊。
「ありがと、澪は?」
「応援の先輩のところだって。」
陽明中の体育祭は基本的に保護者は来ないので生徒だけ。しかし会場は盛り上がっていてすごかった。
「遊ー!」
3人でゆっくりと競技を見ているとテントの後ろの方から澪の声がした。
「あ、いたいた!そろそろ応援集合だよ!」
縦割り種目は応援が午前の最後、競技が午後始め、リレーがラストと割り振られている。
ちなみに午前は男女別競技なので既に二人三脚は終わっていた。
「じゃあ、いってきます!」
そう言って遊は応援のほうへと向かった。
青団の応援は他に見劣りすることなく無事に終わった。
「久しぶりだね、屋上でみんなで食べるの。」
お昼の時間の屋上には青いハチマキをつけた遊、悠、憬都、澪と赤のハチマキの玲、雅幸、黄色のハチマキの啓良がそろっていた。
「先輩たち同じクラスでいいですよねー」
少し恨めしそうに玲が言った。
「人得でしょ?」
「あー、たしかに姉さん以外はそうだな。」
と2人は姉弟ケンカをはじめてしまった。それをスルーして残りの5人は平和な昼食をとっていた。
「そういえば、午後の3つ目が俺たちだって。」
「わかったー。」
こちらの双子兄妹は仲が良く平和だった。
「いいですねー、俺ら2個目ですよ。」
黙々と弁当を食べる雅幸にかわり啓良がそういった。
「じゃあ、そろそろ行くか。」
しばらくしたのち憬都がそういったのを機にグラウンドへと戻っていった。