自らの思うままに
遊の提案により2日後の茅ヶ崎家には憬都、澪、そして玲と啓良と雅幸が来ていた。
「ねぇ、俺1年組も呼ぶとか聞いてないんだけど。」
「あれ?そうだっけ。」
なんとなく不機嫌な悠に遊は何事もなく返した。もういい、と悠は広いテーブルに自分の勉強道具を広げた。
それを見た遊はよしっ、とうなずくとみんなに向きなおって
「じゃ、あたしたちもやろっか!」
と笑った。
2つあるテーブルのうち少し小さい方に1年生、悠がいる方に2年生が座って勉強を始める。始めのうちはとても静かに真面目にやっていたのだが…
「あーっ!もうわかんないー!!!」
数学をやっていた澪が大声で叫んだ。それに続き玲も叫びだした。
「うるさい。」
悠が一喝するがいっこうに静かにはならなかった。
「すみません、俺もわかんないッス…」
雅幸までもがそう言ったとき悠は諦めたようにため息をついた。
「はぁ…、俺が澪のこと見るから。玲と雅幸は遊と啓良で見てやれ。」
そう言って悠は澪と小さい方のテーブルに移動して残りの5人は大きい方のテーブルに移った。
「で、憬都。おまえは英語をやれ!」
悠が睨みながらいうと憬都は思い切り顔をしかめた。
「けーいと?大丈夫?」
悠に言われて理科から英語に切り替えた憬都は問題を前にして固まっていた。
玲に一通りの理科の解説を終えた遊が覗き込むがびくともしなかった。ちなみに雅幸は啓良に古典を教わっている。
「無理だ。英語なんて俺には…。」
「まぁまぁ、どこー?」
解いている問題を見るとそれは文法問題だった。
「あ、これはねー」
遊が解説すると憬都は納得したようでスラスラと答えを書き始めた。
「サンキュ。遊、教えるのうまいな。」
そう言って憬都はほんの少し笑った。
そして、それをじっと見ていたのが1人。
「遊先輩、俺にも教えてもらえませんか?」
声をかけてきたのは啓良だった。啓良は数学を開いてニコニコしていた。
「どこー?」
それに答えて啓良のほうに行く遊を憬都は横目でそっと見ていた。
2時間ほどして澪の数学がある程度どうにかなったのか悠は休憩を申し出た。その頃には憬都の英語、玲の理科もまともになってきており、もともとそこまでできないわけでもなかった雅幸は古典の応用問題にまできていた。
「そうだね。じゃあ、飲み物とか取ってくるね?」
そう言った遊に憬都はついて行こうとしたが…
「先輩!俺も手伝いますよー!」
そういってついて行ったのは啓良だった。
「ありがとう、啓良くん。お客様なのに。」
「いえいえ、先輩こそケーキ焼いといてくれたなんて!」
感謝を述べる遊に啓良はニコニコとそういった。2人の手には紅茶とケーキがあった。
「お待たせ。」
部屋に戻ると澪と玲がケーキを見ておいしそー!とキラキラした目をした。
でも、憬都だけが少し不機嫌だった。
そんな憬都に遊がケーキを渡すと少しだけ機嫌がよくなって
「うまそう。」
と言った。
ケーキのあと再び勉強を始め、その日の勉強会は幕を閉じた。
結果。
1年生
学年1位 九重啓良
2年生
学年1位 茅ヶ崎悠
学年2位 茅ヶ崎遊
このように実はこの3人が学年トップクラスだということがのちのち判明し実際に残りの4人の成績は相当上がったとか。