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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

星屑の観測者

作者: 観測者
掲載日:2026/02/25

まずはこの作品に興味を持っていただきありがとうございます。

こちらの作品が初制作、初投稿となります。

至らぬ点も多くあると思いますが、暖かい目で見逃して貰えると幸いです。


⚠️注意⚠️

この作品は男性同士の恋愛を主軸としたものです。

また、悲恋をテーマにしているため、読み終えてもどこか煮こごりのようなものが残る可能性があります。


それでもいいよという優しい読者の方は行ってらっしゃいませ。

私には好きな人がいる。

その人は一回りも年上の男性だ。

いつから、どうして。今となっては理由など霧の向こう側だが、ただ愛おしく、そして明日も好きでい続けるという確信だけが、私の足元を辛うじて支えていた。


薄暗いホテルの一室には、二つのベッドが冷ややかに並んでいた。

その片隅に腰を下ろした彼の背中へ、私は吸い寄せられるように回り込み、腕を回した。彼のお腹側で指を組み、逃がさないように、確かめるように強くホールドする。互いにアルコールが入っていたせいか、分厚い服の素材を隔ててなお、じわりと染み出してくる彼の熱は酷く鮮明で、私の理性をじりじりと焼いた。

パートナーとして彼のそばにいた時間は残酷なほどに恵まれていたが、こうして心臓の音が聞こえるほど密着していても、彼はガラス一枚隔てた向こう側のように遠い。


他の誰かと楽しげに笑い、親密にハグを交わす彼を見るたび、私の内側では醜い嫉妬が鎌首をもたげた。その笑顔も、腕の温もりも、私だけに向けばいい。本当は私だけに構ってほしいし、ハグだって私以外にはしてほしくない。もっと会話していたいし、なんならエッチなことだってしたかった。

押し殺せる感情にも限界があり、私の想いはとうに透けて見えていた。腕の中に閉じ込めた彼の背中が、私の隠しきれない熱を静かに煽っていく。


「だって、キミの愛は重いんだもん」


背後から抱きついたままの私に、彼の唇からこぼれたその言葉は、私の心臓の形をなぞるように正確で、そして容赦がなかった。

今まで散々押し殺し、自分にすら嘘をついて隠し通してきたはずの愛しさを、いとも容易く暴かれてしまった。

その瞬間、私の中に渦巻いたのは、裸にされたような凄まじい「羞恥」と、それでも彼に自分を正しく認識してもらえたという、歪んだ「快感」だった。


感情の堤防が崩れる音がした。


「だって……好きなんだもん」


ーーそれは、祈りに似た、取り返しのつけない独白だった。


「愛が重いのは自覚してる。けど、好きなんだもん」

腕に力を込め、彼の背中に顔を埋める。

相手が同性であることへの葛藤も、社会的な視線も、彼を前にすれば羽毛よりも軽かった。ただ、彼という存在に、私の心が狂おしく踊ってしまう。この執着を「汚い」と笑うなら笑えばいい。


もっと早く伝えればよかったのだろうか。だが、彼を失う恐怖が私の喉を塞いでいた。もし嫌われたなら、私はきっと全てのやる気を失い、廃人と化していただろう。その結末が、たまらなく怖かった。


「僕もずっと好きだった人がいたから、分かるよ」


彼は遠くを見つめ、静かに、そして淡々と過去を紐解いた。今まで愛したもの達のこと。その全員が同性であり、彼自身が一方的に、深く深く愛していたということ。そして、今はもう連絡すら取れないこと。

「生きていれば、それでいいかなって」

そう語る彼の横顔は、完成された彫刻のように揺るぎなかった。

今の私は、かつての彼そのものなのだという。だからこそ、彼は私の想いに応えることはできないとはっきり告げた。


あらかじめ承知していたはずの絶望が、冷たい水のように全身に回る。

「わかってる……。相手がどう思うかより、自分がどうしたいか、だもんね」

「だから、僕は一方的に好きでい続けるよ。だからキミは、僕のことを都合のいいように使ってくれればそれでいいから」


震える声で、必死に言葉を紡ぐ。

剥き出しの未練が、惨めに足元へ溢れ出す。私は大粒の涙を堪え、「いつものように、人当たりの良い明るい天然の私」としてのペルソナを必死に張り付け直した。


沈黙が降りた部屋で、彼は静かに私を諭す。

「物事には、時間が解決するものと、能動的に動かないと解決できないものがある」

「答えは知っているけど、言わないでおくよ。まだ若いんだから、たくさん悩めばいい」

その優しさが、今の私には一番痛かった。私という人間がどれだけ揺れ動いても、彼は自分という生き方を一ミリも崩さない。その、自らの哲学だけで構築された、果てのない彼の引力に、私はただ黙って頷くことしかできなかった。


ハッピーエンドなんて、最初から用意されていなかったのだ。

人は損得勘定で動くという。ならば、彼は私という人間に、自らの平穏を差し出すほどの価値を見出せなかったのだ。

打算を捨ててでも溺れたいと思わせるような、鮮烈な夢を、私は彼に見せてあげることができなかった。


彼は自由だ。誰にも縛られず、ただ彼という存在を世に刻み続ける。

「僕という存在は、誰かに観測されて初めてこの世に認知される。だから僕は僕でい続ける」

そのあまりに強固な信条が、彼を輝かせていた。私は、彼という恒星を観測する、数多の星屑のひとつに過ぎない。


けれど、ただの脇役であっても、彼の記憶に消えない爪痕を残せたのなら、この痛みにも意味があるのではないか。

私は、彼にとっての「特別」になりたかった。その方法が例え、叶わぬ恋の重荷だとしても。


私はどうすればいいのだろうか。

問いへの答えは、暗闇の中にしかない。

皆、同じように壁に頭を打ち付けながら生きている。

彼の言う通り、私はまだ若い。この感情にどう終止符を打つのか、あるいは抱えたまま歩くのか。

私はこれからも悩み続けるだろう。

そして今度はきっと幸福で涙を流す日が来ることを願っている。


ーー愛して、よかった。

読んでいただきありがとうございました!

いかがだったでしょうか、至らぬ点も多く、読みにくかったかと思われます。

その分だいぶ重たく生々しいものになったのではないでしょうか。

読者の方々に刺さるものがあれば幸いに存じます。

改めまして、ご完読ありがとうございました。

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