【IOF_94.log】DNA鑑定
お疲れさまです。
駐オヤシーマ王国日本国臨時代理大使兼ねて臨時代理領事兼ねて警察庁長官官房付兼ねて警視庁異世界警察署長警視正福原珠梨です。
勤務中異常なし。
異世界に転移してから初めての二日酔いです。
とても頭痛が痛いです。
道場からふらふらと寮の自室に戻り、着替えを済ませて署長室に入ります。
署長の椅子に体を沈ませて頭痛に耐えていると、玄関の方から須田主任の声が聞こえます。
「日本語話者だよ!」
何事ですか?
私たちの他にも日本語話者がいたというのですか?
普段、私たちは現地の人とオヤシーマ語で会話をしています。
これは、リリヤさんがくれた言語補正のお陰です。言語補正の効果で、特段、外国語であると意識することなく、母国語の感覚で会話ができているのです。
今、須田主任が騒いでいるのは、言語補正が必要ない日本語を話す人が来署したということ。山の民が使っている日本語の影響を色濃く残す言語でもなく、日本語そのものを話す人に出会ったのは異世界に転移して初めてのことです。
一瞬で二日酔いが覚めました。いえ、正確には二日酔いでぐったりしている場合ではないという緊張感が勝った結果、あたかも二日酔いが覚めたような気がしているだけです。はい、相変わらず頭痛は痛いです。
須田主任と相談室でお話を伺いました。
奥さまが顔をしかめていらっしゃる……
酒臭い大使兼署長でごめんなさい。
話を聞くと、どうやら日本から転移してきた方で間違いないようです。
オヤシーマ王国で私たち以外の転移者が発見されました。
もしかしたら、把握できていないだけで、他にも日本や世界中から転移してきた人がいるかもしれません。
他の転移者がいるかどうかを確認するのは後に回して、今は発見した特異行方不明者である土田さんに関する報告をしなければなりません。
そうだ、本人特定のために写真撮影と指紋採取、それから口腔内粘膜の採取を可愛さんにお願いしなければ。
「了解っすよ!」
口腔内粘膜はDNA型鑑定を行うために必要となる検体です。毛髪でも皮膚でも構わないのですが、せっかく鑑識に採取キットがあるので活用してもらいます。使わないと次年度予算の査定で減額されてしまうかもしれませんから。
DNA型についてふと思いついたことがあります。
地球がある空間から異世界へ転移することで、私たちのDNA型が変わったりしてはいないだろうか?
ということです。
もし、そのようなことがあったら、本人の意識としては同一人物なのに地球の科学的には別人とされてしまう事態になる可能性もあります。
それでも指紋で同一人と鑑定することは可能でしょう。
しかし、そうなるとDNA型鑑定の精度といいますか、信頼度が大きく揺らぐことになりかねません。また異世界が厄介ごとを持ち込んだと言われそうで気が重くなってきました。
私が私ではないと鑑定されたらどういう事態になるのでしょう。
私ではない誰かになってしまった私は誰になるのでしょう。
新しい私の戸籍は?
警視庁は退職扱いに?
元の私は民法上普通失踪か擬制死亡になるのでしょうか?
ちょっと想像がつきません。
杞憂であることを祈ります。
フラグなんて立てていませんよ!




