【IOF_88.log】娘の成長
こんにちは。
外務省儀典長(大使)福原悠里です。
プロトコールはお任せください。
ついに日本とオヤシーマ王国の国交が樹立された。
娘から送られてきた報告に目を通した私は、交渉過程とその成果である日オ共同宣言が、外務省官僚が行ったものと比べて遜色ないことに驚きと同時に感動を覚えた。
いつの間にか我が娘は、たった一人で国交樹立交渉をやり遂げてしまうほどの力量を身に着けていた。「地位が人を作る」とはよく言ったものだ。あの引っ込み思案の娘のことだ、「私なんかが……」と言いながら誰にもできない大仕事をこなしているに違いない。
ここからの国内での手続きはまさに私の仕事だ。すべて任せろ。
共同声明が発表された後は、「大使館の設置」、「臨時代理大使任命」、それから今回は領事を置かずに大使が兼任することから「領事任命」の手続きが必要となる。
どれも異例の速さ、電光石火の勢いで片付けた。
【閣議決定】
「在オヤシーマ日本国大使館の設置について」
所管は外務省。
所在地はオヤシーマ王国オーメ領カーベ村警視庁異世界警察署内。
大使館の予算措置を財務省と調整。
【臨時代理大使の任命】
外務大臣名で辞令発出。
「在オヤシーマ日本国大使館臨時代理大使 福原珠梨を任ずる」
当面、領事業務も兼務するため、併せて「領事任命書」を発出。
これで娘は、大使が着任するまでの間、大使と同等の全権限を持つこととなり、条約署名、査証発給及び領事裁判権などを行うことができる。いわゆる治外法権だ。
この後は、大使として就任するために必要な「信任状奉呈」がある。これは、経験のない娘が事前知識なしで臨むのは無理だ。
典型的な儀式の流れを詳細な手順書として警視庁を経由して流してもらう。
信任状奉呈の流れはこうだ。
1 日程調整
在オヤシーマ日本大使館(=警視庁異世界警察署)とオヤシーマ王宮の「礼賓局」的部局が連絡を取り、日取り及び式次第を決定する。
2 当日
娘(臨時代理大使)は正装(警察の正礼服+勲章帯など)で王宮へ。
勲章帯に付ける日本国の勲章はないはずなので、通常は勲章を佩用しないが、今回は、オヤシーマ王国から外交上の儀礼として勲章が授与されることとなっているため、その勲章を佩用することとなる。随員は、最少人数(2から3名)が同行。
3 謁見の間
王宮式武官が案内し、国王、第四王女(外務大臣役)、宰相らが整列。
4 国歌演奏(日本国歌、オヤシーマ王国歌)
双方起立の上敬礼。
これは、オヤシーマ王国に国歌があるかどうかにより対応が異なる。
5 信任状奉呈
娘が王の前に進み、外務大臣名の「親書(信任状)」と「紹介状(外務大臣書簡)」を恭しく差し出す。
王がこれを受け取り、一礼。
このとき、大使就任予定者は「わが天皇陛下の名において……」と一言添えるのが慣例。
6 国王挨拶、会談
王が歓迎の言葉を述べ、歓談。
お膳立ては済ませた。
あとはお前がしっかりやれ。珠梨。
母さんもお前の大使就任を心待ちにしているぞ。




