【IOF_74.log】礼服
お疲れさまです。
警視庁異世界警察署長警視福原珠梨です。
勤務中異常なし。
やっぱり謁見は避けられませんか……
宰相のクロダさんが帰ったあと、私は自席で大きなため息を漏らします。
それにしても、クロダさん、そのまま軍師でした。
「カンベエ・グンシ・クロダ」
分かりやすいです。
この世界って、日本人のプロディーサーがいるのでは? と思ってしまうくらい日本の香りがぷんぷんします。
謁見ですよね……何を着て行けばいいか悩みます。
「署長、転移直前に被服から礼服を借りてきています。あの後、表彰式がある予定でしたから。うまい具合に署長の礼服もありますから、警視の礼肩章が使えます。残念ながら帽子は警部のものになってしまいます」
そういえば礼服を借りていました! ちょうどいいです。帽子は、階級を表すリボンだけ取り替えてしまえばいけそうです。装備課さん、ごめんなさい。
この礼服は、表彰式のために借りたもので、謁見は借用理由外使用になってしまいます。念のため装備課に上申を上げておいた方がよさそうです。城取主任、上申書の起案をお願いします。
「署長、できました。これでいいですか」
城取主任、仕事が早いです。
起案された文書を点検します。人が作った文書を点検するのは、本当は好きではないです。書類の間違いや不備を指摘されるのって気分が悪いじゃないですか。だから、できればやりたくない仕事です。でも、それが幹部の仕事ですから、嫌だとも言っていられません。
ああ、間違いをみつけてしまいました……
できれば指摘なしで決裁したかったです。
「城取主任、発番のところなんですが『異界・警』となっていますね。ここは中ぽつではなくて、下の点なんです。本部からの通達などを見てもらえば分かると思います。ここは、間違いやすいところです」
「そうなんですね。つい、中ぽつを打ってしまいます。これからは気を付けます」
城取主任が気を悪くしなかったようでほっとしました。
「じゃあ、そこを直したら発出してください」
「了解」
「それと、謁見の日、署長車の運転を城取主任にお願いします。署長車は、やはり警務で運転して欲しいですから。ああ、あとですね、謁見の際の手土産は何がいいでしょう……」
「謁見って手土産が必要なんですか?」
「いえ、絶対に必要というものではありません。手ぶらでも何も問題はありません。ですが、せっかくの機会なので日本らしい物を献上したいなあ、と」
「日本らしいものですか……それなら酒蔵を開けましょう」
酒蔵ですか?
「ええ、警務には諸行事や急なお祝い事に対応できるように、ある程度の酒を保管している倉庫があるんです。そこにビールが未開封で数箱あったはずです。これをリリヤさんに知られると飲まれてしまうので黙っていました」
ビールはいいかもしれません。こちらにはエールというビールに似たお酒があるようですが、味は、正直に申し上げて「うーん」と唸ってしまう感じです。そんな世界ですから、すっきりとした辛口のビールは喜ばれることでしょう。それにします。
「じゃあ、熨斗を掛けておきます」
「お願いします。表書きは『謹呈』、名書きは『異世界警察署長 福原珠梨』で」
「了解しました」
さて、謁見の日はお化粧でもしてみますか。普段はリップくらいしか使いません。でも、さすがに王宮に参内するのにスッピンというわけにもいかないでしょう。自分で言うのもなんですけど、化けた私はきれいですよ。化ければ、です。
「化けた署長は『より』きれいなんじゃないですか?」
はい、城取主任満点! 署長即賞を授与します。お世辞でも嬉しいです。




