【IOF_69.log】B四零号室
はい、33405です。
警視庁警務部人事一課監察係主事九十九百です。
勤務中異常なし。
私は警察官ではありません。事務職、正式には行政職の警察職員です。
監察係に所属してはいますが、監察の仕事には携わっていません。私の仕事は、警務部別室の事務全般です。この警務部別室は、別名「B四零号室」と呼ばれています。陰で「警視庁の最終処分場」とか「B四霊安室」とか言われてもいるところです。
B四零号室は、公式には存在していません。ここにいる人は、私と責任者である参事官以外はみんな「警務部付」という地位にいます。部付というのは、つまりは「何もすることがない人」です。特にB四零号室は、仕事がないのではなく「仕事をさせない」ことを目的に作られたという歴史的経緯があります。
警視庁として辞めさせたいが免職にできる材料がない。さりとて本人が自発的に辞職することにも応じない。そんな人を一か所に集めて、なにもさせずに「辞めます」と言い出すのを待つ部屋です。同人作品で「S○Xしないと出られない部屋」という設定があります。ここは「辞職しないと出られない部屋」です。
え? なんでそんな作品を知っているのかって?
私がサークル参加する側の人間だからです。
そんな希望も何もない部屋だったB四零号室ですが、今ではずいぶん変わりました。
今まで、この部屋から次の所属に異動できた人はいなかったものが、少し前にご栄転者が出たのです! めでたいですね。
以前は、まったく仕事を与えられず、ただただ時間を浪費するだけだったのが、ちょこちょこと仕事をもらえるようになりました。とはいえ、なにぶん非公式な部署です。まともな仕事はもらえません。少々訳ありな、言い換えれば厄介な仕事が多いです。
でも、ここにいる人たちは、元々のポテンシャルは高いものがあって、それが原因となってドロップアウトしてしまったようなところもあります。だから、多少厄介な仕事を与えられても嬉々としてこなしてしまう変人揃いです。
このような変わった部屋に前代未聞の特殊任務が下りてきました。
「幽霊との連絡窓口になれ」
はい? て感じですよね。
「非公然部隊として磨きがかかってきた」
副総監から直接下命を受けた参事官も苦笑いです。
参事官から下命内容と背景について説明を受けました。
ちょっと前に九方面にある警察署から署員が何人も同時に行方不明になる事件がありました。今回の下命は、それに関係しているとのこと。
行方不明になった署員は、日本から異世界に転移したそうです。
なんですって!
まるでライトノベルの世界じゃないですかっ!!
これは私のターンですねっ!
すみません、興奮してしまいました。
そして、その転移に巻き込まれた変死体から魂だけが分離して異世界に飛んで行ったと。
さらに、その魂が幽霊になって、天界を経由して日本に帰ってきたと。
そればかりか、天界を経由することで神格を与えられて幻神になっていたと。
日本から異世界に戻った幽霊がまた日本に来て総監と面会すると。
その後、幽霊がB四零号室に来て、ここのメンバーと顔合わせをして、以降は、この部屋を幽霊と警視庁が接触する窓口に指定すると。
さいですか。
もう驚きすぎて逆に冷静になりました。
いえ、元々この部屋には人間と犬のハイブリッドで犬耳がかわいい天渡早苗さんという部屋長がいるから、人ならざるものには耐性があるんです。
あ、天渡さんから「私は人を捨ててない」って怒られました。
それでも、一気に流れ込んでくる情報量の多さを私のしょぼいCPUとメモリーでは処理しきれません。冷静になれたのは、きっとフリーズしたからです。
濃いめのコーヒーで再起動をかけ、思考を巡らせます。
異世界転移。
異世界警察署の設立。
幽霊によるふたつの世界間移動。
これから始まる異世界との交流。
こんな胸熱な展開をリアルに経験できるなんて! 創作が捗ってしまいます。細大漏らさず記憶するわ! ただ、事実をそのまま創作に落とし込むと職務上知りえた秘密の漏洩になって懲戒処分を受ける可能性があるから注意!
幽霊、いえ、幻神様がいらっしゃる前に部屋をきれいにしておかなきゃ。
はい、皆さん、大掃除です! 参事官も逃げちゃダメ!




