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【IOF_46.log】幽霊さん消失

お疲れさまです。

 警視庁異世界警察署臨時職員見習いの幽霊郡司蓉子です。

 勤務中異常なし。


 福原さんが、山のてっぺんにある神の塔をみつけました。実際には、神の塔ではなく、警察の無線中継所だったみたいです。

 山の民のみなさんが代々守ってきたということなので、かなり昔からあったはずです。その古さでは発電機が動かないんじゃないかと心配をしたところで我らがリリヤさんが華麗に登場しました!


 このところ、リリヤさんが天界から薄い本を持ってきてくれるので、ご相伴にあずかるのが楽しみです。気づくと会計の小路さんも混ざっています。もしかしてヲタク?

 リリヤさんや小路さんが薄い本を読み始めると、暴対の南畝主任が嫌そうな顔をして遠ざかっていきます。この手の作品が苦手なのかもしれません。苦手な人に見せない工夫も必要です。ゾーニングは大事ですよ。

 リリヤさんが言うには、福原さんが現場に行けばエンジンが動くように取り計らってくれたらしいです。ありがたいですね。まるで神様みたいです。


 ということで、行きます。

 神の塔攻略作戦開始です。

 今回のメンバーは、責任者が福原さん。これは当然ですね。そして、理系の可愛さん。機械ものに強い木村係長。最後に、山岳救助隊である奥山係長の合計四人です。私も付いていきます。生体としての人数にはカウントされませんけど。

 リリヤさんは、やることやったから行くまでもないって署長室でだらだらしています。リリヤさんはそれでいいのよ! 私の最推しだから。


 署を出発した私たちは、街道を国境方向に進みます。念のため、全員拳銃着装です。可愛さんと木村係長は、初めて向かう場所にワクワクしているみたいです。

 拳銃といえば、ちょっと前に福原さんと城取主任が話をしているのを聞きました。なんでも、転移のときに署の拳銃保管庫にあった拳銃と実弾は、そっくりそのまま残っていたそうです。だから、いまこの署には拳銃と実弾がたくさんあります! 私にもくださいって言ったらダメだと即答されました。解せぬ。


 快調に走る車の上で「ピー○くんの歌」をご機嫌で歌う私です。

 前々から思っていたんですけど、「ピー○くんの歌」の「ピー」って、実は倫理コードに引っかかる文字を隠している伏字の効果音なんじゃないかって。だから「ピー」をはがすと、下から放送できないような2文字が出てくるかもしれません。何が出てくるんでしょうか。ポロリもあるよ! 乞うご期待!。


 そうこうしているうちに車は街道から山道に。凸凹道だけど私には関係ありません。浮遊してるんで。しかも、質量ゼロなんで。糖質ゼロじゃないですよ。

 車を乗り捨て(もちろんドアロックはしました)、徒歩で集落を目指します。可愛さんと木村係長、集落までの道がなだらかだからって舐めてかかるとあとで泣きを見ますよ。ふふふ

 集落でウマコさんとの再会を果たし、族長にも挨拶できました。福原さん、相変わらず拝まれています。もういっそのこと神であると自認してもいいのでは?

 絶対に嫌だそうです。睨まれちゃいました。

 さあ、本番はここからですよ。燃料の携行缶は男性陣2名が背負子で背負っています。軽油20リットル入りだから、始めのうちはそれほどでもないかもしれませんが、歩いているうちにずっしり来る感じの重さです。それを背負ってあの急斜面を登るのかと思うと、ちょっと気の毒になってきます。私は浮遊してるし幽体だから物を持てません。悪しからず。

 今回もウマコさんが塔まで先導してくれました。親切というより半ば監視の役割を押し付けられたんじゃないかという気がします。福原さんに聞いたら「いいんです。隠し事はないから、どんどん見て族長に報告してくれた方が私としても報告の手間が省けて楽です」と言って笑っていました。豪胆です。


 誰一人滑落することなく塔に到着しました。塔だけに……

 男性陣は足腰に来ているようです。お疲れさまです。

 柵とドアの鍵を開けて小屋に入ります。

 持ってきたLED式のランタンで室内を照らします。

 このランタン、防爆対応でスイッチの火花が出ないような構造になっています。原油汲み上げの仕組みを作るときの夜間作業に大活躍しました。

 室内にあるのは、質素な事務机が1脚と大型のラックがひとつ。

 事務机の上にはパソコンと液晶モニターが1台ずつ。パソコンは、日本の有名メーカー製です。競争入札に強いところらしいです。

 私は、みんなの邪魔にならないよう、壁に沿って固定されているケーブルの束に座って少し上から観察します。


 ラックには、よく分からない機械がたくさん組み込まれています。

「神符専用」とテ○ラが貼られた機械が今回のターゲットです。個別の商品名はNGワードだそうです。リリヤさんに1文字消されました。


発電機が動いたら、無線機を稼働させた上で、スロットに神符を挿入したらどうなるかを確かめます。

 携行缶から「軽油」と書かれたタンクに自家精製の軽油40リットルを移します。エンジンオイルも規定量追加です。

 スタータープーリーにロープをかけて、奥山係長が一気に引きます。

……ぼぼっ……ぶっぶおおおん

 エンジンが回りました!

 ガラガラガラという音がします。壊れているわけではないですよね?

木村係長の話では、ディーゼルエンジン特有の音だそうです。

可愛さんがラックに組み込まれた機械のスイッチを入れていきます。

機械の前面に色々なインジケーターランプが点灯します。

中継所が息を吹き返しました!

「これ、UWっぽいっすね。電波が飛んでるか試してみていいっすか」

 ラックに収められた機械のひとつを可愛さんが指さします。

 その機械からは電話の受話器についているみたいなクルクルとねじれた黒いコードが延びています。コードの先にはマイクのようなものがあって、ラックのフックにひっかけてあります。いい感じに韻を踏みましたね。


 可愛さんが機械のダイヤルを操作します。いま、署で連絡用に使っているチャンネルに合わせているそうです。

「御岳山中継所から異世界」

「異世界です。どうぞ」

 ちょっとの間が開いて応答がありました。

「御岳山中継所、稼働試験中。異世界宛変調波を発射するっす。本日は晴天なり……御岳山中継所のメリットいかがすか。どうぞ」

「御岳山中継所のメリット5。異世界から御岳山中継所宛変調波を発射する……」

……

「以上、御岳山中継所」

 可愛さんが満足そうな顔でマイクをフックに戻します。

「電波飛んでたっすね。この中継所はすごくいい場所っす。ここの八木アンテナ1本で警視庁の立川庁舎と本部を一直線で結べる位置っす。おまけにうちの署がある場所もその線の範囲にあるっす。八木アンテナは電波の指向性が強いすから、ほぼまっすぐに進むっす。だから、この配置は1本の八木アンテナで全部賄えるように考えられているっすね。まるで場所を選んで転移させられたんじゃないかって思うくらい絶妙な位置っす」

 つまり、中継所と署と立川庁舎と警視庁本部庁舎が一直線に並んでいるということですか。よく考えられてますね。


「電波が飛んでいることが分かったので、神符をスロットに入れてみます……」

 福原さんが緊張しています。私は、何が起こるのか楽しみでドキドキです。

 どこから持ってきたのか、アルミのアタッシェケースから神符を取り出します。

「やっぱり私なんですか?」

 福原さんが可愛さんにすがるような目を向けています。たぶん、却下されます。

 やっぱり却下されていました。

「テープカットだって一番偉い人がやるもんす」

「これはお祝い事ではありませんよ……」

 もう諦めるしかないですね。

「分かりました。私がやります。これって挿す向きがあるんですか?」

「基板に矢印が書いてあるっす。その方向で挿せばいいっす」

「ああ、この向きですね。分かりました」

 福原さんが、大きく深呼吸をして神符を矢印の方向に挿入しました!

 さあ、何が起こるでしょうか!

 おや、1台の機械から「ぶーん」という唸るような音が聞こえてきました。


 えっ?! あれっ?! ちょっと待って!


 なんかお尻が引っ張られるんですけどーっ!

 誰? 私のお尻引っ張ってるの?

 え、誰も引っ張ってないし、そもそも触れない?

 そうですよねー

 いや、そうなんですけど、お尻がどんどんケーブルに吸い込まれていくんですが?

 皆さん、見えてます? 私の危機ですよ?

 あ、そうか黙ってるから誰にも気づかれないんだ!


「すみませーん。吸い込まれますぅ」


 その声とともに私はケーブルに吸い込まれて消えました。


なにこれ、楽しい!


 ケーブルに吸い込まれた私は、塔の上にある細い棒がいつくも並んだようなアンテナから空間に射出されました。投げ出されたという言い方もあるかもしれませんが、勢いがすごいです。だから射出です。

 とにかくすごい速さです。まるで光速のウォータースライダーに乗っているみたい。


 びゅーん! と飛んであっという間に雲を突き抜けたと思ったら、「がっしゃーん!」とガラスが割れるような音がして、空間に穴が開きました。


 私は、うまい具合にその穴を通り抜けました。その直後、それまでの勢いがなくなり、ごろごろと床を転げまわってようやく止まりました。

 床を転げまわったのに全然痛くないです。

 体を起こしてあたりを見回します。

 どうやらここは、どこかのオフィスのようです。

 私が入ってきた穴は、窓ガラスが割れたあとのサッシ枠です。

 部屋の広さは30畳くらいでしょう。かなり広いです。

 しっかりとした両袖の役員机と革張りの椅子があり、簡単な応接セットも確認できました。

 机の上には「新生」、「転生」それと「封印」と書かれた3つの木箱が並んだ状態で置かれています。


「なんじゃ、派手に天現界壁をぶち抜いてきおったな」


 それまで誰もいなかったはずの部屋に突然男性の声が響きました。


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