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【IOF_43.log】族長

 お疲れさまです。

 警視庁異世界警察署警務課長代理警部福原珠梨です。

 勤務中異常なし。


「行って来ます」

 在署員に敬礼をして署を発ちます。

 まずは、一旦街道に出ます。街道まではこれまで通ってきたコースを使いました。山に向かうには遠回りになりますが、確実に通れるところを選ぶ方が安全との判断です。

 街道に出たら領主邸とは反対方向、隣国との国境方向に車を進めます。ここからはウマコさんの道案内です。


「宿責、地図端末は更新になったけど、カーナビはダメだね。GPSは使えないね。自車位置が測位できてない」

 地図端末が復活して、地図も更新されたことでカーナビももしかしたらと期待していました。残念ながらGPSは使えないようです。衛星、飛んでいませんもんね。

 国境方向と言いましたが、隣国との境までは街道で8リーくらいあるそうです。もうこの国の単位はだいたい理解できてきました。「リー」は「里」ですね。だから、8リーは、おおむね30キロメートルくらいでしょう。山道なので馬車だったらノンストップでも6時間くらいはかかる距離です。隣国が山梨県だったとしたら、奥多摩湖(オゴーチ湖)のすぐ先が都県境です。おそらくそのあたりが国境です。肌感覚としては、割と近いです。

 この世界では、日本でいう都道府県が国の単位になっているみたいです。昔の日本もそんな感じでしたよね。


 ウマコさんの案内で街道を逸れ、山道に入っていきます。さすがに山道は凹凸が目立ちます。車が上下左右に揺れ、三半規管が弱い人だったら乗り物酔いしそうなほど。

 そんな山道を四輪駆動の軽は力強く登坂してゆきます。

 ハンドルを握る須田主任が山頂方向を見上げながら呟きます。

「この方角は、やっぱり御岳山だね」

 山道をゆっくり、途中、進路をふさぐ倒木や礫などを排除しながら、小一時間ほどかけて少し開けた場所に出ました。署がある場所をぐっとスケールダウンしたような感じです。

「ここより先は、道せまくなる。ゆえに歩みて進むほかなし」

 ウマコさんが降車を促します。私は、その旨を署に一報することにしました。

「異世界33から異世界」

「え、異世界? あ、ああそうか。異世界です。どうぞ」

 城取主任が慌てています。予告なしでコールサインを変更してしまいましたからね。驚くのも無理ありません。

「これより車両を降車、徒歩にて山の民の集落を目指す。UWは携行するので無線通話は可能。どうぞ」

「異世界了解」

「以上、異世界33」


 ウマコさんに続いて細い山道を登ります。細いといっても車が通れないという程度で、人がすれ違うには問題ありません。

 傾斜もそれほど急ではありません。これなら楽勝なのでは?

 え? フラグ? やめてください。

 リリヤさんが縁起でもない念話を送ってきました。どこかで見てますね。

 いくら傾斜が緩やかとはいえ、やはり山道です。それなりに息が上がります。

 軽く息を切らしながらウマコさんの後を追うこと数十分。集落が見えてきました!

 ウマコさんは集落の中に入っていきます。私たちはその後ろを付いて行きますが、集落のあちらこちらから祈りをささげるようなポーズと視線を感じます。


 やがてウマコさんは一軒の家の前で足を止めました。

「これより族長をお目通し申す。しばし、ここにて待たれよ」

 そう言い残してウマコさんは家の中に消えていきました。

 相変わらず周囲からは祈られ続けます。

 座ってはいませんが、お尻がムズムズする感覚です。

 待つこと数分。ウマコさんが顔を出しました。

 どうやらお目通りいただけるようです。

 ウマコさんに連れられて家の中に入ると、そこは族長の座所となっているのか、生活臭のない殺風景な空間でした。


 まず驚いたのが、部屋の奥では族長と思われる男性が跪いて地面に額を着けていたことです。いわゆる土下座のような姿勢です。

 ウマコさんも苦笑しています。ウマコさんとは、道中色々とお話をして私が神ではないことを納得してもらえました。ですが、族長さんは私の肌の色に強く反応してしまったようです。これは仕方のないことと諦めます。

 とりあえずお顔を上げてください。

「このたびは、我が子ウマコを危地より救いくださり、まことに感謝いたす。われは族長、イナメと申す」

 族長さん、ウマコさんのお父様でした。

「そなた、神の塔を望まれるとか。神の使徒にあらせられるお方の仰せを、どうして退けられようか。心ゆくまで、その御目にて検められるがよい。案内はウマコに任せようぞ」

 えっと、使徒じゃないんですけど……どうしてもそこは外せませんか……?

「ご丁寧にありがとう存じます。わたくしは、異界の地の国、日本国から参りましたジュリ・フクハラと申します。この度は、族長にお目通りがかない恐悦至極に存じます」

 族長の真摯なお姿に感動しつつ礼を返します。

 礼には礼を以て。

 族長がすごくいい笑顔を見せてくれています。こちらも嬉しくなります。

「これは、まことに聡きお方にてあられる。神の御庇護を受けるにふさわしき御身なり。あなた様ならば、いつの折にても我らは歓迎いたそう。これより先も友誼を結んでくだされば、神に仕える民として、これ以上の光栄はありませぬ」


 歓迎はされているけど誤解は解けてなかったー!

 あ、リリヤさんの庇護を受けているからあながち誤解でもないんですね。

「わたくしは、建国の祖テンテル様の庇護をいただいている身ではございません。母国においては、騎士のような身分の者。どうかあまりかしこまらないようお願い申し上げます」

「うむ……心得た……」

 絶対納得していませんよね?

 納得してください。


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