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【IOF_38.log】貨幣価値とガス管

 さて、私が作業を見守っていても役に立つことはないので、その間に金貨の価値を検討することにしましょう。

「可愛さん、鑑識の電子はかりを私の席まで持ってきてください」

「了解っす」

 鑑識は、本当に色々な機材や試薬があって異世界向きです。警備係の便利さも捨てがたいですね。チェーンソーもあるからいずれ森を切り開くときがきたら活躍しそうです。エンジンカッターに至っては鉄だって切れちゃいます。


「小路さん、会計の金庫から大金貨を1枚出してください」

「了解です」

 辺境伯からいただいた大金貨100枚は、大事なものなので会計係の大きな金庫に保管してもらいました。そこから1枚だけ出してもらいます。小路さんのことですから、この出納もきっちり記録に残してくれることでしょう。

 私の机の上に電子はかりと大金貨1枚が揃いました。

 素手で作業しても問題はないと思いましたが、気分を上げる意味もあって白手袋をはめます。うん、それっぽくなりました。

 電子はかりの電源を入れ、摘まみ上げた大金貨をはかりの皿にそっと置きます。


「27.2グラム」


 ここから先は、大金貨が純金かそれと同等程度の純度を有していると仮定して計算します。実際の金貨が純金だと柔らかすぎるので、いくらかの混ぜ物は入っていると思います。そこまで考えるとややこしくなるから、ここはざっくりと。

 たしか、直近での金相場では、1グラムあたり17,000円くらいだったと記憶しています。金相場に関心があるわけではありませんが、社会経済情勢の一環としてたまに相場を見ることがあります。

 グラムあたりの相場と大金貨の重さから、大金貨の日本での価値はいくらでしょうか。


「462,400円」


 セバスチャンさんに教えてもらったオヤシーマ王国での大金貨の価値が日本円にして50,000円くらいということでした。


 ということは、オヤシーマ王国の物価は、日本の9~10分の1ですね。


 大金貨1枚が騎士の月収というのも納得のいく金額です。日本円で月500,000円もらえれば、それなりに豊かな生活ができることでしょう。オヤシーマ王国に所得税のようなものがあるかは不明ですけど。まさか五公五民なんてことはありませんよね?


「宿責ーっ! Kなんちゃら引っこ抜けたました!」

 ツナギ姿で全身すすだらけの木村係長が裏庭から事務所に飛び込んできました。

 溶接で使うような分厚い牛革の手袋をはめた手に赤黒く焼けたような金属の塊が握られています。その塊からは電線のようなものが2本延びています。

「これがそのKなんちゃらなんですけど、これってネジでねじこんであったんですよ。で、最初はKなんちゃらの本体だけをスパナで回して取ろうと思ったんです。だけど、さっきのドラム缶から出てる管の方にはネジ山が切ってないんです。さすがに署には旋盤なんてないから、Kなんちゃらの本体だけ引っこ抜いたらダメだなってことになって、ネジになってる取り付け部の周りごとガス切断で焼き切ってきました」

 木村係長のドヤ顔が拝めました。

 うん、ドヤっていいと思います。


「テスターで試したら、センサーは生きててちゃんと測定できたっす」

 そこまでやってくれていたんですね!

 可愛さんもドヤって!


 ガスの利用可能性はどうかしら?

「それについても目途は立ってるっす。あの池から出てるガスの主成分はメタンっす。直接吸うと危ないんで、まず池の上にドーム状のフタをかぶせて1か所に集めるっす。で、その中のガスを水で満たしたタンクに潜らせて気泡で受けるっす。これで勝手に貯まっていくっす。そこからは単純に鉄管を敷いて署まで引っ張ればいいっす。300メートルくらいなら、自然圧だけでも十分届くはずっす。ただし、圧が強すぎると逆流したり漏れたりするんで、管の途中に逆止弁と圧抜きバルブを入れる必要があるっすね。で、署の方では、使う分だけニードルバルブで絞ってコンロや給湯器に送れば大丈夫っす」


 えっと、色々よく分からないんだけど、弁とかバルブの類はこちらで調達できるものなのかしら? せっかくの知識があっても必要な部品が揃わなければ安全が確保できません。

「そっちも心配無用っす。ガスを扱うには安全弁が要るっていうのはさっき説明したっすね。最低でも火が管を逆流しないようにする『逆止弁』、過剰圧を逃がす『圧抜き弁』、流量を微調整する『ニードルバルブ』この三つは必須っす。幸い、これは全部異世界でも作れるはずっすよ。逆止弁は真鍮球とバネで簡単に作れるし、圧抜きは重り式の安全弁で代用できる。ニードルバルブだって鍛冶屋にねじ切りの技術があれば、時間はかかっても現地で作れるっす。どれも仕組み自体は単純っすから、あのドラム缶を作れる鍛冶屋のおっちゃんなら問題なく再現できるレベルっす」


 力強い回答をもらいました。ガスもなんとかなりそうです。

 鉄管をつなぐのは、木村係長の溶接に頼りましょう。

「それじゃあ、木村係長と可愛さんは、鍛冶屋のミノさんのところに行って、原油蒸留とガス採取からの送管に必要な物を作ってもらってください。鉄管の溶接は現地での作業ですね。あと、クソウズ池での作業には、必ず硫化水素用フィルターを付けたガスマスクを着用することと、監視員の配置を厳守してください。もちろん火気厳禁で」

「了解だ!」

「了解っす」

 異世界警察署、エネルギー問題解決の第一歩を踏み出しました!


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