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【IOF_29.log】領主邸へ

 お疲れさまです。

 警視庁奥多摩警察署警務課長代理警部福原珠梨です。

 勤務中異常なし。


 ローレル様の案内でクソウズ池という名前の原油自然湧出池を発見することができました。

 可愛さんにガス検知管で硫化水素の存在も確認してもらいました。

 原油だまりから気泡が出ているからメタンも沸いているらしいとのこと。

 原油を精製できれば発電機を再稼働させることも可能になるかも……ちょっと自信がないので言い切れないところが心苦しいです。

 メタンだって、署まで引いてくることができるなら火を使った料理をしたり、給湯器を使えたりしそうです。署のボイラーは電気式のお湯を貯めておけるタイプのものなので、発電ができれば、いよいよお風呂も現実味を帯びてきます。

 異世界でのサバイバルに光明が差してきたところですが、まずはローレル様たちを屋敷に送り届けなければなりません。

「可愛さん、原油から軽油を精製する方法を確立できますか? それと、天然ガスを署まで引いてきて火力として利用できる方法も検討してください」

「了解っす。どっちも可能っす。自然湧出原油から軽油を精製する技術は19世紀には考案されていたっすから、この世界の鍛冶屋レベルでも作れると思うっす。天然ガスを使う方は楽勝っすね。任せてくださいっす」

 力強い答えが返ってきました。理系に強い署員がいてくれてよかった。


「ちなみになんですが、署の自家用給油所は、転移の2日前にローリーがきて満タンにしていきましたから、2万リットルがほぼほぼ残ってます。当分はガソリン車を走らせることができると思います。裏のスタンドは、停電時には手回しで給油できます」

 会計の小路さんもすごい貴重な情報をありがとうございます!

 それでも、2万リットルのガソリンも有限であることには違いありません。無駄遣いしないように皆さんで協力していきましょう。


 それでは、いよいよローレル様をお屋敷に送り届けることにします。

 運転は、南畝主任にお願いしましょうか。顔面の威圧で3人分くらいの警戒力になることを期待しています。

 あまり大勢で押しかけては先方も警戒するでしょう。南畝主任と私の2人で行きます。南畝主任は拳銃弾こめでお願いします。

「ローレル様、私たちが訪ねて行ったら、閣下はどんな反応を示しそうですか?」

「そうですわねえ。端的に申し上げれば、お父様は武闘派です。辺境伯というのは、隣国からの侵攻や野生動物の出奔に際して矢面に立つのが国王から命ぜられた勤めでございます。ですから、どの辺境伯も程度の差こそあれ、皆さん武闘派でいらっしゃいます。けれど、お父様は乱暴者ではございません。言葉も通じますし、わたくしとマーガレットが一緒であれば異世界人とて悪いようにはなさらないはずですわ。しかもフクハラ様はテンテル様の生き写し。もしかしたら姿を見るなり平伏なさるかもしれませんわね。わたくしとしては、それを期待しているところでございます」

 ローレル様が含み笑いを浮かべます。意外と腹黒?

 ともあれ、ちょっと安心しました。いきなり切りかかってこられたらどうしようかと思っていました。


「道すがら、要所要所で無線のメリット交信を行いながら領主邸まで向かいます。屋上にあげたアンテナの効果を知りたいので。城取主任と須田主任は無線番をお願いします。残った方で庁舎警戒を回してください。よろしくお願いします」

 署に残る皆さんに諸々のお願いをして出発します。

 今回使う車は、私服用の捜査車両、いわゆる覆面です。「警視庁」のロゴが入っていると、こちらの聖紋様と間違われて面倒なことになるのが分かったからです。覆面かつ四輪駆動の車を用意しました。車載無線機があるので、通信に困ることはありません。

「ジュリちゃん、私は一緒に行けないの?」

 リリヤさんは神様のお仕事はないんですか? すっかり署長室に居座っていますけど。それと、今回は居残りです。テンテル様でもない神様が現れたなんてことになったら領内が大騒ぎになってしまいます。

「ぶーぶーぶー」

 リリヤさんが、立てた親指を下に向けて上下させています。抗議してもダメですからね。居残りです。


 玄関先でぶーたれる神様を放置したまま、森の中を街道に向けて進みます。

「奥多摩21から奥多摩」

 隊長間のチャンネルに合わせた無線で署を呼び出します。

「奥多摩です。どうぞ」

「開局。要保護者の搬送のため、ヘキチ辺境伯邸まで出向する。どうぞ」

「奥多摩了解」

「なお、途中、要所でメリット交信を行うので確実な無線の傍受を行われたい。以上、奥多摩21」

 無線のスピーカーマイクをフックに戻して周囲の警戒に復します。

「ローレル様、街道に出たらそのまま下ればいいのですか?」

「ええ、しばらくの間は街道をお進みくださいませ」

「途中でお屋敷に向かう道に逸れます。そこはわたくしがご案内申し上げます」

 マーガレットさんが案内を申し出てくれました。

 まずは森を抜けるところから。街道までの間は、すでに一往復しているので進むべき道はわだちが示してくれます。


 車に乗っている人からは見えませんが、屋根の上では幽霊さんが楽しそうに歌を歌っています。周りからも見えないように隠密のスキルも発動しているそうです。歌っている曲は、警視庁のマスコットキャラクターの歌ですね。


 ♪頭の上には空中線


 というあれです。


 街道に出る手前でメリット交信を行います。

「奥多摩21から奥多摩」

「奥多摩です。どうぞ」

「現在地、街道との合流地点。奥多摩宛変調波を発射する。本日は晴天なり。本日は晴天なり。本日は晴天なり。奥多摩21のメリットいかが。どうぞ」

「奥多摩21のメリット5。奥多摩から奥多摩21宛変調波を発射する。本日は晴天なり。本日は晴天なり。本日は晴天なり。奥多摩のメリットいかが。どうぞ」

「奥多摩のメリット5。以上奥多摩21」

 メリットというのは、無線の電波に乗って飛んでくる音声の明瞭度のようなものです。メリット5が最高で、メリットの数字とともに明瞭度が下がって行き、メリット2くらいからは、ほとんど何を言っているか聞き取れない程度になります。まあ、多少雑音が混ざったり途切れたりしてもメリット5で返信してしまいます。面倒なので。

 それからは、おおむね5キロメートルごとにメリット交信を行いながら領主邸を目指しました。マーガレットさんの案内で街道から逸れる地点までメリット5で通話ができています。



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