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【IOF_16.log】サバイバル開始

 お疲れさまっす。

 警視庁奥多摩警察署鑑識係巡査長可愛楓夏っす。

 勤務中異常にゃーっす。


 神のぶっちゃけ話が衝撃的すぎて、眠くなるどころではないまま空が白み始めたっす。

 結局、ゆうべは午前3時を少し過ぎたあたりで自家発電が燃料切れで止まったっす。

 そのあとは、警備の発発でバルーンライトを点灯させて夜明けを待つことになったっす。

 夜明けは、午5五時ころだったすかね。

 東の空がほんのりと明るくなり、次第に署の周りの景色が姿を現したころ。


「やっぱり異世界なんでしょうか……」


 窓から外を見ていた宿責の福原代理がぽつりとこぼしたっす。

 酒盛りをしながら夜明けを待つ間、私たちは色んな話をしたっす。

 もちろん話の中心は、会計係の小路さんが発した「これって異世界転移じゃね? 説」っすね。

 諸般の情勢を客観的に総合すれば、どうしたって異世界転移という結論が一番しっくりくるっす。いや、逆にこれが異世界転移じゃないとした場合の説明が思いつかないっすよ。

 非科学的? 合理的じゃない? そんなことは百も承知っす。

 だけど、これは現実っす。

 理解が及ばないからといって、そこから目を逸らしていても何も解決しないっす。

 おまけに神の暴露話で異世界転移があるのは確実だろうと思えたっす。

 私たち全員の統一見解として、もう考えることは放棄したっす。だって幽霊までいるんすよ。

「そういうもの」

 そうでも思わなければ気が狂うしかないっす。


 これが異世界転移だとしよう。それはOKっす。

 そうしたら次に思いつくことは「元の世界に帰れるのか?」すね。

 小路さんの話によると、帰れる作品もあるが、ほとんどは帰れていないらしいっす。

 私のような独身だったら帰れなくてもそれほど気に病むことはにゃーす。

 でも、家族がいる人は深刻っすよ。

 神の話では、帰れなくはないものの、非常に条件が厳しそうっす。

 なんとか帰してあげたいもんすね。帰れないとしても、ご家族に安否の連絡くらいはできるといいっす。通信手段が全滅している現状では、それも難しそうすけど。


「まあ俺は帰れないんじゃないかと思ってるけどな」

 助手席の南畝主任が大あくびとともにごちたっす。

 そう、いま私と南畝主任は、これから署の四輪駆動車で周辺の探索に向かおうとしているところっす。

 夜が明けて、周りの景色が見えるようになり、いよいよもって異世界転移の線が濃厚になったことを受けて、宿責が周辺探索の指示を出したからっす。

「地理的な状況、どんな人がいてどんな動物が生息しているのかも分かりません。まずは、近場から探っていきましょう。署にUWを置きますから、車載無線機を隊長間のチャンネルに合わせて運用してください。とはいえ、UWのバッテリーにも限りがあります。無線で通話できなくなるのは困りますから、あまり遠くに行かず、決して無理はしないでくださいね」

 宿責が泣きそうな顔で指示をくれたっす。

「大丈夫っすよ。南畝主任がいれば熊が出たって向こうから逃げていきますって」

「それはそうかもしれませんが……でも、心配なものは心配なんです。拳銃も携帯していってくださいね」

 本当に福原代理は心配性というか優しいっすね。惚れてまうやろ。


「あ、宿責。警備係が屋上にUWの外部アンテナを立ててあります。ケーブルは警備の部屋に引き込んであるんですけど、延長ケーブルをつなげばここまで引っ張ってこられます。屋上のアンテナなら通話できる距離がなかり広がりますよ」

 おお、公安係の須田主任から実にいい提案があったっす。無線は障害物がない方がよく飛ぶっす。だから高い所にアンテナを設置する方がいいんす。

「それはありがたいです。さっそくやってください」

 当然、宿責が提案を受け入れるっす。連絡手段は命綱っすからね。これで署外活動も安心っす。

「じゃあ、行ってきゃーす!」

「行ってらっしゃい。よろしくお願いします」

 宿責が敬礼で送り出してくれたっす。

 私と南畝主任が最初の異世界探索者になるっす。

 不安もあるけど心躍るのも事実っす。

 署の裏庭から四輪駆動のパトカーで外に出たっす。

 ゆっくりと車を進めて署の正面に回り込んだところで一旦降車。

 昨日みたいな硫化硫黄の臭いはないっすね。風向きの関係かもしれないっす。

 署の周りは一面の木、木、また木すね。とはいえ、木々の間を縫って車を走らせることができるくらいの密度っす。周辺の探索に支障はにゃーす。


 太陽はまだそれほど高くないっす。目測で仰角45度くらいの高さっす。

 腕時計を見る。お気に入りのアナログ時計っすよ。

 時刻は午前9時を少し回ったところっす。

 私は、時計の短針を太陽にまっすぐ合わせるっす。

 次に文字盤の12時と短針の中間に正対するっす。

 地球では、こうすると南の方角が分かるんすよ。

 さて、ここ異世界ではどうすかね。

 地球でいうところの南に正対したまま、ジャケットのポケットからコンパスを取り出し、手のひらの上に水平を意識して安定させるっす。

 そうすると、地球では北を示す赤い色のついた針が私の真後ろを指して静止したっす。

 どうやら方位に関しては地球と同じみたいっす。磁場も似たような構成なのかもしれないっす。


 方角が特定できたところで、遠景に注目するっす。

 北の方は遠くに山が連なっているのが見えるっす。その山は西まで続いてるっす。北から西にかけては山岳地域ということみたいす。

 南は、高い山のようなものは見えないっすね。平坦な森が続いてるっす。

 東の方は少し趣が異なるっす。

 北から西にかけては山に向かって標高が上がっているっすが、東はなだならに下っているように見えるっす。

 つまり、私たちがいる場所は、山のすそ野のようなところだろうと想像した次第っす。東にずっと下って行けば人里もあるかもしれないっすね。

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